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「朝食前に」

   あのまま、結局何かされる事もなく、暖かく包まれながら話してる内に、いつの間にか眠っていた。  目が覚めると、横にされて抱き締められてた。 「おはよ……」 「気分は? ソラ」  気分。  自分の状態を確認。ルカを見上げた。 「……もう平気」 「なら、さっきリアたちが朝食べに行こうって来てたぞ」 「うん。行く」  例によって、散々したのに、綺麗になってる体。  清める魔法って。超便利……。ずーっとお風呂入らなくていいのかな?? 「どうした?」 「清めの魔法使い続けてれば、お風呂入らなくてもいいの?」  そうしたら、ルカは、おかしそうな顔をして、ふ、と笑った。 「……風呂は、気持ちいいから入るんじゃねえの?」 「あ、そうだね。うん」  そう言われてみればそうでした。  もちろん気持ち良いのはわかってるんだけど、なんか、もっとゲームしてたいとか、もっと遊んでたい時に、母親からお風呂入れーて言われてたのが頭によみがえって、入らなくて良いのかななんて思ってしまったのだけど。  変な事言っちゃった。  そう思っていたら、ぷ、とルカに笑われた。  「まあ入らなくても居られるかもな」 「……便利だねえ」 「魔法の練習するんだろ?」 「うん。したい」 「精神集中するとこからだな」  クスクス笑いながら、頭をくしゃ、と撫でられる。  集中かー。どうやってするんだろう。  ルカやゴウには習いたくないな。  ざっくりとしか教えてくれず、呆れられそう?  やっぱりリアかなー、キースかなー?   オレには何の魔法が使えそう?なんて話しながら階下に降りていくと、宿屋の下に食べるとこがあって、皆が居た。 「適当に注文してくるから座ってろ」 「ん」  ルカだけ注文する所に向かったので、皆の所に近付く。 「おはよー」  言うと、皆、あ、という顔を見せた。 「――――……んー、ソラー大丈夫だったー?」 「大変だったね。ごめんね、中まで清められなくて」 「まあでも結局は良かったんだろ?」  ……ゴウだけ嫌い。  じろ、と睨むと。ゴウがクスクス笑った。 「だってほんとのことだろ?」 「もう。言わないでよ」 「だってお前、ルカに、早くしてって」 「う、わー! もう言わないでってば!!」  ほんとにそれ言ったんだ、オレ。  真っ赤になって、じたばた暴れてゴウのセリフを遮ろうとするんだけど、ゴウはクックッと笑いながら続ける。 「面白かったのがルカでさー。 早くって言われると、マジで余裕なくなるみてえで、お前抱いたままぴしって固まってるし」 「…………っ」 「どっちが惑わされてんだっつー感じだったぞ。むしろルカが大変だったろ、あの後」 「………………っ」  もうマジで黙って。  血管が、恥ずかしさで爆発しそうなんだけどっ。 「つーか、あんなにモテて、すげえ慣れてる奴なのに、ほんと、面白ぇよな――――……お前の何がそんなに気に入ってんだろうなあ?」  よしよし、と頭を撫でられる。 「もうからかうのその辺にしといてあげなよ」  と、キースが言う。続いてリアも笑いながら。 「ていうか、ゴウだって、ソラのこと気に入ってるでしょ? からかって超楽しそうだし」  ……嘘だ。気に入ってるとかそんなんじゃない。  ただからかいたいだけだし。 「もう、くしゃくしゃにしないでよ、もう」  ゴウのデカい手を払おうと藻掻いていると。 「だから触んなって言ってんだろ、ゴウ」  ルカの声が低く響いて、オレは肩を掴まれて、ルカの方に引き寄せられる。  あ。ルカ。  ――――……咄嗟にホッとして、またそれにも戸惑う。 「何でお前真っ赤?」  オレの顔に気付いたルカに、すごい眉を顰められる。  ち、ちがうし。  ゴウに撫でられたから赤くなってるんじゃないからね。  何て説明しよう……ていうか、オレこの言い訳しなきゃだめなの?  葛藤してると、横からリアが笑いながら。 「昨日のソラの事でゴウがからかったからよ」  そう言ってくれた。  ……リアは、いつも好き。  感謝しつつ。 「何? 早くしてって、あれ?」  ルカにくす、と笑われて、余計に真っ赤になる。  すると、ルカはますますおかしそうに笑って。 「たまにはいいよなあ?」  クスクス笑ってからかうようにオレを見るルカに、リアが。 「それ言われて余裕なくなってるルカの事も、おもしろいってゴウが話したから余計に真っ赤になったのよねえ? ソラ?」  …………リアもオレからかって遊んでるし。  さっきの「いつも好き」はちょっと撤回……。 「別にオレ余裕なくなってなんかねえし」  何言ってんのゴウ、とルカが低い声で言う。 「嘘だね」  ぷ、と笑うゴウ。 「はー? ふざけんなっつの。あんな事くらいで余裕なんか」 「無くなってたろうが。早く宿屋入るって」 「あれはソラがヤバかったからで」 「へーー」  …………この話、終わってくんないかなあ……。  あんまりに恥ずかしくて、泣きたい気分になりながらルカを見上げてると。  ルカがそれに気づいて、じ、と見つめ返してきた。 「――――……まあたまには可愛くていいよな、あれも」  そんな言葉で、この話を終えようとしてる。  ――――……なんなんだ。もう。  眉を顰めてると。  ルカが頼んだ、ルカとオレの分の朝ごはんが運ばれてきた。  ……なんか。この僅かな間に、恥ずかしさに、どっと疲れた。

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