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「温泉の町」
「ソラの世界にも温泉はあるんだ?」
キースに言われて、うん、と頷く。
「同じなのかは分かんないけど。ルカがさっき色んな効き目があるって言ってたから、同じかも」
「温泉て、ここと、ほんの数か所しかないみたいだけどね」
「こっちも温泉が出るとこは決まってたよ」
そんな話をキースとしていたら、ルカがリアを呼んだ。
「リア、行った事あるんだろ? 飛べるか?」
「飛べる飛べる! すごい久しぶり、楽しみ。 行くよー?」
嬉しそうに笑うリアの周りが、いつもの如く、光る。
肩の辺りで浮いていたミウを抱き締める。と同時に、ルカに、ぎゅ、と肩を抱かれる。
新しい町につくと、独特の温泉地の匂いがして。
入り口には「温泉の町ミロへようこそ」なんて看板がかかっていた。
すごく賑やかなのが外からでも分かる。
町の中に入ると、すぐ近くで、受付みたいな人達が居て、服を売っていた。
「ソラ、薄衣つけて入って良い事になってるんだ。買おうぜ服」
ルカに腕を引かれて、うん、と頷く。
「ミウはお湯には入れないから。どっか行って遊んで来い」
ルカの言葉を聞いて、ミウは、オレを見た。
「待っててくれる?」
そう言うと、ミウはほわん、と、楽しそうな感じで飛び去って行った。
「ミウっていつも1人で何してるんだろ?」
その後ろ姿が消えていくのを見つめながらオレが言うと、ルカが、ぷ、と笑いながらオレを見下ろした。
「大丈夫だぞ。 あいつ、ソラよりずっと強いから。とりあえず、結界があるから、誰も危害を加える事は出来ないし」
「じゃ大丈夫なんだね」
頷くルカに安心しつつ。
あんな可愛いのに、オレより強いって。
て、オレは誰になら勝てるんだろう??
……複雑。
「あたし、着替えてくるねー」
もう服を選んだらしいリアが、楽しそうに言って消えていった。
ゴウとキースも一緒に男物の服を選ぶ。
ああ、なんか、水着を着て温泉入るとことか、日本にもあったな。
おんなじようなものか。……でっかい滑り台とかは……さすがになさそうかなあ。でも、なんか、すごい。楽しそう。
「ソラは上まであるの着ろよ」
「え。何で? 下だけがいい」
「だめ、こっちから選べ」
「だって、服が体に張り付いて気持ち悪そうだし」
見渡すと、大体の男は下半分しか着てないし。
何でダメって言うんだ。
膨れてルカを見ると。
「体に痕ついてるから。良いなら良いけど……って、ダメだ。他の奴に見せんな」
「――――……っっ……」
痕ってなんだと思った瞬間に理解して、かああっと赤くなる。
「っなんでそんなに痕つけるんだよっっ」
小声で言うと、ルカってば、すごく楽しそうな顔で、ニヤリと笑う。
は、しまった。
絶対、余計な事、聞いた。絶対恥ずかしいこと言われる……っ!
そう思ったから、かなり警戒して、身構えたのに。
「オレのもんだって印と――――…… 吸い付くと、ビクビク震えて、すげえエロくて、可愛いから」
「――――……っっっ」
オレのもん、までは言いそうだから耐えられたんだけど。
次のセリフは、想定よりきつくて、オレは一気に真っ赤になった。
「……っもう、ルカ、嫌い!!!」
「はー? お前が聞いたんじゃんか」
「でもそんなの、絶対からかって言ってるじゃん!」
「まあそーだけど。 いちいちそんな反応するお前が悪いだろ、誰だってからかうに決まってる」
いけしゃあしゃあと、自分を正当化してるルカに、
さっきまで太陽みたいなんて思っていた事は、もう遠くの方に掻き消えた。
真っ赤になった顔が熱い。
それが余計にムカムカする。
もう、このデリカシー無し、エロエロ王子ーー!!
からかってばっかりの、意地悪勇者ーー!!!
恥ずかしい分、めっちゃムカムカするー!
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