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「お菓子作り」4

  「これ位でいいかなあ……」  なんとか生地は、作り終えた。  もう感覚のみ。  濃すぎな砂糖とミルクは控えめで、卵とバターでしっとりさせて。  途中で、美味しくできたら皆にも配ろうと思って、いっぱい作ってもいい?とジェイに聞いてみた。そしたらジェイが、材料買ってくれるならいくらでも作っていいよと言うので、すぐに、ぱっとルカを見つめたら。  ルカが、ぷ、と笑って。好きなだけ作れば、と言ってくれた。  なので、でっかいボールに、かなりの生地の量。  筒状にして包丁で切って、形整えるのが一番楽だなと思って、少し硬めの生地にした。  生地をまとめてから、筒状になるようにのばしていくと。 「何だそれ、何するんだ?」  ルカが少し離れた所から楽しそうに言ってくる。  見ててね、と言って、作業に没頭。  あ、なんかすっごく、楽しい……。  ウキウキ丸めて並べ終わって、それから包丁を借りて、輪切りにしていく。  それを可愛い感じにちょっと潰して丸く整形して、鉄板に並べていく。  ……クマさんを作ろう。  小さい子も食べてくれるかも。  ちょっと大きな丸に、卵の黄身で小さい耳を重ねて付けて、串で顔を描いたり。  ていうか、クマっているのか? 「ルカ、クマって居る?」 「居るよ。山奥とかにな。襲われんなよ」 「ルカと一緒にしか行かないから大丈夫……」  居るにしても、そのクマをこんな可愛い感じには、作らないのかな。  まあよく分かんないけど、いいや。クマって分からなくても、何となく可愛ければ食べてくれるだろう。  はっ!  ミウも作ろう。  わくわくわくわくわくわく。  クマと少し変えて、耳とか替えて。 「ルカ、これなんだか分かる?」 「――――……ミウか?」  おお分かってくれた!  大喜びしていると。 「……お前が作ってるって事と、オレも知ってるって事で、予想しただけだけど……」  ルカは、クッと笑いながらそんな風に言う。  そんなからかいは無視して、オレは、クマとミウを大量生産して、あとはもう丸いのをひたすらつくって並べていく。それから最後に、チョコの実を混ぜた生地で同じように丸いのを作る。  チョコチップクッキーのつもり。だけど。これ焼いたらどうなるんだろう。  美味しく焼けたらいいけどなあ。  ウキウキしながら、最後に黄身をスプーンで塗っていく。 「なあソラ、それ何で黄身を塗るんだ?」  ジェイに聞かれる。 「ツヤツヤに焼きあがるんだよ。……多分。 窯で焼いた事ないからちょっと分かんないけど」 「いつもは何で焼いてるんだよ?」 「オーブン……」 「オーブン?」 「……ていうものが、あるの」 「ふうん……」 「この1枚だけ黄身塗らないで焼いてみるね。比べてみよ」 「おう。もう焼いていいのか?」 「うん! お願いします」 「ん」  ジェイが大きな鉄板持ち上げて、窯の蓋を開けて、中に入れる。  隣でウキウキ見守っていると。 「すぐ焼けるのか?」  椅子に座って足を組んでたルカが、立ち上がって窯の近くに歩いてきた。 「どうだろ……薄いから、すぐかもな」 「焼けるまで見てる……」  中がのぞけるので、じーっと見てると。  直接火があたるとかじゃなくて、熱で焼いてく感じなのかな……。  なんかもう、良い匂いがしてきたんだけど。  甘い匂い。 「良い匂い……」  美味しく焼けてくれるといいなー。  ……ていうか、こんなに大量に作って、まずかったらどーすんだって、話だけど。  1回試しに作ってから、大量に作れば良かったかなあ……。  と今更な事を考えながら。  でも、良い匂いが漂ってるので、うきうきわくわく期待感いっぱい。    ジェイも隣で見てて、ルカはすぐ後ろにまた座ってて。  3人でひたすらクッキーが焼けるのを待つだけって。  なんか変な空間に、ふ、と笑ってしまいながら。  オレは、焼き上がりをただひらすら待った。

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