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「酔っ払いめー!」

 においだけで、きつかったお酒。  それを少しとは言え、飲んだ皆がどうなったかと言うと。  ルカ以外は、まあそれぞれぐだぐだになって、かなり酔っぱらった。  キースは眠り始めちゃったし、アランとジェイとゴウはすごい声がでかいし、顔赤いし。それで騒いでるし。  リアと苦笑いしつつしばらく見守っていたのだけれど、もうお開きにしようかと言う事になった。 「ここの片付けは明日やるからもうこのままでいーぞー」  片づけた方がいいのかなとリアと話していた時、ジェイが酔っぱらってるくせに、一応気づいてそんな事は言ってくる。 「じゃあもう宿帰ろうかしらね」 「皆歩けるのかな。……ルカは大丈夫なの?」  ルカは、あの酒を飲んだ後も、それまで飲んでたお酒を、口直しとばかりに普通に飲んでるし。 「ああ、平気」  ……ルカは酔わないんだね。ほんとどんだけ強いんだか。 「皆歩いて帰れるのかなー?」  オレには、支えられないけど。歩いて帰ってもらわないと。  そう思って言ったら、ルカがリアを見て「リア、移動魔法使えるか?」と聞いた。 「んー、無理かもー」  そんなリアの返事に、無理なの?と聞くと。 「うん、酔ってると、どっかとんでもないとこ飛ばしちゃうかも」  うわー怖い……。  苦笑いしつつ、皆で歩いて帰ろうと心に決めつつ、テーブルの反対側に居るキースの隣に近付いた。 「キース、起きて?」 「……ん」 「キース? 宿に帰ろう?」  今までキースが飲んでるとこも結構見たけど、キースも多分強くて、全然顔に出ない人なのに。あの毒みたいな酒がよっぽど強かったんだろうなあ……。  飲まなきゃいいのに、皆悪ノリしすぎだよね。  キースなんて絶対とばっちりだったし。付き合わされて可哀想に……。 「キース?」 「……そら?」  あ、目、開いた。 「あれ、オレ……寝てた?」 「うん。寝てた」  珍しい。なんか。  キースが、すごくぼーーっとしてる。  珍しすぎて、くす、と笑ってしまう。 「もう終わりにして、帰ろうって。立てそう?」 「ん……」  立とうとしたキースは、ゆら、と揺れて。  一旦テーブルに手をついた。 「あ、一旦座る? キー…わわっ」  座らせようと支えようとしたら、なんか変に掴まれて。オレには当然、支える事も出来ず、変にバランス崩したまま、下にばた、と倒れた。  上に押し乗られる感じで、ぺちゃんこにされた。 「おも……」 「あ、ごめん、ソラ……」  一旦焦って、起き上がろうとしてくれたみたいだけど、次の瞬間、頭を押さえて、オレの上にもう一度崩れた。 「すっごい、くらくら……」  そんな風な呟きが耳のすぐ脇で聞こえる。 「キース……大丈夫?」  重くて、抜け出れそうにない……。  ちょっと、そこの、酔っ払いたち、こっちに気付いてよ……。  目の端に映ってる、ゴウとジェイとアランにそう願うけれど、大騒ぎしててこっちにまるで気づかない。  ていうか、隣で倒れたのに全然気づかず大騒ぎってどういう酔っ払いだよ……。ルカは、テーブルの反対側に居るんだけど、多分、倒れたとこを見てないと、もう視界から消えちゃってて、気づいてないのか、助けに来てくれない。 「キース、寝ちゃった……?」 「ん……ごめんな、今起きる……」  あ、良かった、起きてはいる。 「……立てそう?」 「んー……なんか、こんななるの、初かも……」 「困ったね……」  と、その瞬間。  やっとゴウたちがこっちに気付いた。 「はー? 何してんの、お前ら」  ゴウの声。  「早く、起こして……」    というオレの声をかき消して。 「わー、なにこんなとこでおっぱじめてんだよー?」  アランが面白そうに騒ぐ。  もう、バカなの? 違うから!! 早くキースを起こしてよー!! 「ルカ、ソラが浮気してるぞー」  ……ジェイもバカだった。  3人は面白がって騒ぐだけで、全然キースを起こしてくれない。 「キースを、起こしてあげてってば……!」  言うけど、キースが乗っかってて、重いし、そもそも3人がうるさすぎて、全然聞いてくれないし。  わーん、もう!! この酔っ払い3人めー!!

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