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「リアとお茶会」
造船場から地上に出ると、ルカが先に歩き出した。
「リアはどこにいるの?」
「薬草を売ってる店に、薬を作る部屋があるから、そこでやるって言ってた」
「そうなんだ」
ルカの隣に並んで歩きながら、ミウを見上げる。
「――――……お前って、ミウと会うの初めてだよな?」
「え。うん。初めてだよ」
「……だよな」
「どうして?」
首を傾げながら聞いたら、ルカは、苦笑い。
「まあ……お前が飛んできてから、ミウに会うまでに、接触が無いのは、分かってンだけど……」
「うん」
「何でこんなに守ろうとするかな……」
「さあ……」
なんでだろう?
分かんないけど。
「まあ考えても分かんねえけど。あ、ここだ」
ルカがドアを開けてくれるので、その店に入った。
店の中には、木のカゴの中に色んな薬草、瓶の中に、よく分からない物体も色々入ってる。とかげとかへびとかそれ系のが入ってるっぽい、何か分かんないけど……うん、見ない見ない。
目をそらしていると、ルカが、店の人に話しかけている。
「リアが来てるだろ?」
「奥の部屋に居ますよ」
「ソラ、来い」
「あ、うん」
店の物で、気持ち悪くなさそうなものを興味ありつつ目をそらしつつ、ドキドキビクビクしながら眺めていたら、ルカに呼ばれてしまった。もうちょっと見たかったような、見たくなかったような。そんな気分でルカに近付いて、一緒に奥の部屋に入ると、リアが振り返った。
「あ、ルカ、ソラ。どうしたの?」
「お茶タイムできる? お菓子も持ってきたから」
そう言うと、リアが笑顔で立ち上がった。
「もちろん。手洗ってくるね」
「うん」
リアが嬉しそうに笑って、部屋の奥で手を洗い始めたので、部屋のテーブルにお菓子とお茶の準備を始めた。
「ソラ達は食べないの?」
「船のところで一緒に食べて来ちゃった」
椅子に座って、お茶を注ぐ。
「わあ、可愛い、ソラのクッキー、ほんと可愛いね」
「ありがと、リア」
嬉しいな。
そうそう、この反応だよね、欲しいのは。
やっぱりゴツイ男子の皆さんから得られるものとは、大分違う。
うんうん。
「昨日より色んな形があるね。これどうやってつくるの?」
「これは、袋に入れて、先っちょ切って、こう絞り出す感じ」
「へええ、すごいね」
ああ、楽しい。
ウキウキしていると、部屋の窓際に立って、こっちを眺めていたルカが、クスクス笑う。
「戦うより、リアとお茶会してる方が、ソラには似合うな」
まあ。その通りだけど。だって、オレに戦える訳ないし。
笑われてるとちょっと……ちょっと、悔しいけど。
でもやっぱり、お茶会してるほうが圧倒的に好きみたいなので、反論はしない。
「なあ、リア」
「うん?」
「オレとソラとミウを、城に運んでくれるか?」
「うん、いいよ」
リア即答。
「疲れてねえの? ゴウとキースも迎えに行くのに」
くす、と笑って、ルカがリアにそう聞いてる。
「だってソラの為の情報集めとかに行くんでしょ? お菓子ももらったし。疲れてても行くよ」
「……ありがと、リア」
わー、なんか。
とっても、嬉しいかも。
嬉しくて、じーんと、浸りながらリアを見つめていると。
ルカが、ふ、と笑った。
「……お前、ソラの事好きだよな。 会って間もないのに。珍しい」
「何よ、珍しいって」
「リア、普段は初対面の奴に心許さねえだろ?」
「……まあ、そうだけど。ソラはなあ……」
ソラは……??
リアの言葉を何となく黙って待っていたら。
「こんなのどかな無邪気な子は別」
ぽふぽふ、と頭を叩かれる。
「…………」
喜ぶところなのか、いまいち分からない……。
「ていうか、こんな短期間に結婚しようとか言ってるルカにそんな事言われたくないんですけど」
リアが笑いながらルカに向かってそう言うと、ルカは、ああ……と苦笑い。
「しかもルカ、ずっと結婚なんかしないとか言ってたくせに。意味わかんないんですけど」
「――――……まあ、そうだけどな。……ソラは……」
さっきのリアの真似なのか、同じように言って、少し黙る。
ソラは……??
オレはまた、少し待って。
「……ソラは、ソラだから。 こいつだけは別」
――――……また、よく意味が分からない。
オレはオレだから??
眉を寄せて首を傾げていると。
あははは、とリアが笑って、オレの髪をくしゃくしゃと撫でた。
「ルカは、ソラがソラだから、好きなんだって」
……そういうことなの??
なんかすごく、良い方にリアは取ってるような気が。
「……あんま、触んな、オレのだっつーの」
「やあよ、あたしの愛でる対象でもあるんだから」
「はあ?」
まったく意味の分からない事で、何だか軽く言いあい始めたので。
「リア、マドレーヌ、食べてよ。美味しいからさ」
「え、どれ?」
「これこれ」
言うと、もうリアはルカを無視して、マドレーヌを口に入れた。
「んー、美味しいね、これ」
「良かったー。あ、そうだ、これ、キースとゴウのだから、後で渡してくれる?」
「いいよ。喜ぶよ、きっと」
ふふ、とリアが笑う。嬉しくなって、オレも自然と笑んでしまう。
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