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「本拠地到着」
リアとのお茶会が終わって、テーブルの上を片づけた。
「ごめん、リア、後でこの入れ物、ジェイに返してもらえる?」
「ん、分かった」
リアはそれを受け取って、自分の荷物の上に置いてから。
オレとルカを見つめた。
「じゃあ、行く? ルカのお城」
「ああ。頼む」
ワクワクワクワクワク……。
気持ちの中に、ワクワクしか、ない。
オレ、知ってる所だよね。多分。
あってるなら、本拠地、と呼んでた場所だ。
――――……すごいでっかい城があって、城下町が栄えてて、カジノとかもあって、色んな店も大きくて。
急に行ける事になって、こんなワクワクすることって、無い。
ぶに、とルカに頬を掴まれる。
「な」
何すんの。
思って、ルカを見上げると。
ぷ、と目の前で、可笑しそうに笑われた。
「そんな楽しそうにされると、笑える」
「なんで笑うかな。楽しみなんだからいーじゃんか」
「ワクワクしてますって、顔に書いてある」
「う」
確かに、その通り、ワクワクしまくっていたけど。
リアも可笑しそうに笑って、オレ達のやり取りを見てる。
「ミウ、おいでー」
すぽ、と抱っこして、リアの側に立つ。
「あ。着替えとか、持ってないよ?」
ふと気づいて言うと。ルカが「向こうに山ほどあるから」と笑う。
あ、そっか。
そうだよね。
――――……うう。たのしみ。
「ルカ、色々見て回ってもいい?」
「――――……先、調べてからな?」
ぷ、と笑われて、よしよしと撫でられる。
もういい、年下のルカによしよしされようと、とにかく、いっぱい見たい。
楽しみすぎる……。
「じゃあ行くよー」
いつも通り。リアの周りが光って。
次に着地した時には――――……。
目の前に、大きな門があって。堀と、高い外壁。
そうだ。簡単に攻められないようになってるんだった。
……この目で見ると、すごい、でっかい――――……。
なんとなく見覚えはあるけど。
ゲームの画面で見るのとは、全然違うなあ。
「すっごい……」
思わず言った言葉に、ルカとリアが隣で笑ってるのが分かる。
「ルカ王子?!」
門番をしてた剣を持った人が、ルカに気付いて、そう言った。
「おかえりなさい、王子」
もう1人も、笑顔でルカに言う。
「ああ」
ルカが笑って答えてる。
わーなんか。
……王子っぽい。
大体にして、リアたちと居ると、誰も王子って呼ばないし。
なんか、たまに王子って言われてはいるけど――――……あんまり実感ないんだけど。
なんか、こんな門番みたいな人達に、王子、とか呼ばれてると。
なんか、雰囲気が、急に違って見える。
「橋を降ろしますね」
合図とともに、橋が降りて来て、中が段々見える。
思わず近付きそうになって、「まだ待ってろよ」と掴まれて、笑ってるルカの側に引き戻される。
全部降りた瞬間、ルカがオレの手を引いて、橋を渡り始める。視線の先に町が見えてくる。
今まで見てきた町とは、やっぱり全然違う。
それぞれの建物も大きいし、店も多くて、人も多くて。
中に入ってしまえば、高い塀の中なんて思えないほど、広い。
「うわー……」
道の奥に、お城が見える。
「でっか……」
橋を渡り終えた所で、圧倒されて、足が止まってしまった。
ふわふわーとミウが飛び出して、先に飛んでいく。
「あれ。ミウ行っちゃった」
「探索にいったんじゃない?」
まあ。ミウは大丈夫だと思うけど。
ふわふわ遠ざかっていくのを見送っていると。
不意に、ルカを呼ぶ声が響いた。
「ルカ王子!」
「帰ってきたんですか?」
何人かがルカに気付いてそう叫んだら、色んな人達がわらわらと、近寄ってきた。
「ルカおかえりー!」
不意に女の子達が現れて、ルカに抱き付いたり、してる。
おお。
すごいな……。
迫力がすごすぎて、思わず引くと。
リアが隣で苦笑い。
「大人気なんだよねぇ、ルカ……しかもちょっとしばらく、離れてたから余計かも。魔王倒せなかったのは伝わってると思うんだけど、関係ないみたいだね。――――……まあ、ルカにしか倒せないって皆分かってるし、次に期待してるんだろうから、当たり前か~」
「……ほんと、すごいね」
しみじみ言うと、リアは、ふふ、と苦笑いを浮かべて。
「まあ普段はここまで取り囲まれてないから。大丈夫よ」
クスクス笑いながらリアが言う。
めっちゃ女の子にくっつかれてるけど。
あれはきっと、普段もなんじゃないだろうか。
むー、と思った瞬間。
いつの間にか横に居なくなってたオレを、ルカが探したみたいで、こっちに気付いた瞬間。 ばち、と瞳が合った。
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