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「お城の間近で」
目が合うと、ルカは、ニヤ、と笑った。
なんとなく見透かされたような感じで、ちょっと嫌だ……。
「今日は用事があって戻ったから、もう行く。道開けろよ」
くっついてる女の子達の腕を外させて、取り囲んでる周りの皆にそう言って。
「ソラ、リア、来い」
ルカが、なんだかすごく通る声でオレ達を呼ぶと。
何となく周りがこっちを見ながら道を開けるので、ちょっとドキドキしながらその中を歩く。近付いた瞬間、肩にルカの手が回って、ぐいと引き寄せられる。
「――――……っ……」
……何で、くっつくんだ、人いっぱい居るのに。
思ってルカをちょっと見上げたら。その隣で、リアがオレの顔を見て、クスクス笑ってる。
人混みを過ぎたら、ルカの手は離れたけど。何となく、手首を掴まれたまま歩き進んでいく。
ルカはその後も色んな人に話しかけられてるし。
リアも友達がいっぱい居るみたいで声を返しながら歩いていたのだけれど。城に近付く途中でリアが、ついに立ち止まった。女の子達が何人かが居る。リアの仲良しなのかな。
「ちょっとあたし、ここで話してからお城行くから、先行ってて。書物の部屋だよね?」
「あー……リアは戻ってもいいぞ? レジーに頼むだけだし」
ルカの言葉に、リアはちょっと考えてから。
「了解! じゃあ適当に戻って、薬作って、ゴウとキース迎えに行くから」
「頼んだ。なんかあったら、こっちに帰ってこいよ」
「うん。じゃあね、ソラ、明日ね。朝食べたら迎えに来る。ルカのお城、楽しんでね~」
「うん。ありがと」
バイバイ、と手を振って、リアと別れる。
「……ルカ、めちゃくちゃ人気あるね?」
「王子だからな」
普通の事のように言うルカに。
――――……人気ない王子だって、世の中にはいっぱい居ると思うけどなあ。
めっちゃ女の子たち、ルカに絡んでたなあ。
…………あれが、今まで散々聞いてた、ルカのモテモテ伝説か。
ふむふむ…………なるほどねー……。
まー。
いーんだけどさー。
別に。
オレだって彼女居たしー。
女の子とそういう関係あったしー。
全然、気にしてないし―。
ぜんぜん――――……。
ふっと気づくと、ルカがオレを見下ろしてるのに気づく。
「何?」
「――――……すげーふくれてるし。何、じゃねえよ」
ぷ、とルカが笑う。
「何言ってんの、ふくれてなんかないし」
「この口のどこがふくれてねえって言うんだよ」
そんな言葉とともに、片手で、ぶに、と頬を挟まれる。
「――――……何。女、ムカつく?」
「べ、つに。全然」
その手から逃れようとしつつ、そう言うのだけれど。
全然手、離してくれないし。
道の真ん中で、顎と頬掴まれたまま、じたばたしてるオレって何。
「離してよ――――……っ???」
ルカの顔が急に近づいて、え、と思う間もなく、唇が重なってきて。
「……ん、ン……っ?」
ああなんか。
道に居る人達が、ざわついてるし。
「…………や、め――――……」
なんかもうゴウ、キース、リアたちや、アランとジェイにも見られるの、少し慣れて来てしまっているんだけど……。
だって、あの人達ルカがオレにキスしてても、平然としてるから……。
だけど、全然知らない人達に、しかもルカが帰ってきて注目集めてる、お城の超近くの道でキスされるとかー! かなりざわついてるけど、なんで? お城の人達は、見慣れてないの???
「は、な、して……」
「――――……何でだよ」
もう、何でじゃないし……っわーん、ルカの恥知らず―。
「……わかった、じゃあオレの部屋いこ。 他全部はその後だ」
「……え?」
ルカの部屋?
そう聞いて、2つの気持ちが、一瞬にして、沸き起こった。
ルカの部屋って! お城の王子様の部屋って、どんなか、すっごい興味があるーやったー!っていう。ワクワクな気持ちと。
…………この流れで、ルカの部屋って。
用があるのは、ベッドしかないんじゃ…………。しかも全部その後って。その後って。……ていう、ちーん、ていう、気持ち。
お城で一番最初にする事がそれって、どーなんだ。
うわーん。 ルカのバカー。
ぐい、と腕を引かれて、もう連れていかれるしかないのかと思った瞬間だった。
急にルカが足を止めた。
「え?」
ちょっとびっくり。何で急に止まったの?
「……ルカ?」
顔が見えないので、後ろから、ルカを見上げたら。
「レジ―。元気か?」
ルカが、ふ、と笑う。
あ、レジ―って。ルカが言ってた人……。
ルカの視線の先を見ると。
銀色の長い髪。少し冷たく感じる雰囲気の男の人。
離れて見ててもわかる、グレーの瞳、綺麗。
すごく頭の切れそうな。年は少し上……結構上? 見た目じゃよく分からない。
日本に居たら……理系の研究者って感じ。白衣が似合いそう。
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