156 / 293
「お城の中へ」
「元気か、じゃないですよ……」
レジーは、ため息とともにそう言う。
凛とした声。しゃべっても、頭よさそう……。
と思ったら。
いきなり、まくし立て始めた。
「何なんですか、騒がしいと思って出てきたら王子で、近づこうとしたらいきなり、キスシーン。しかも、男の子ですよね。ほんとに手当たり次第ですね。さすがに呆れますよ。魔王を倒せなかったと聞いて、さぞかし落ち込んでるのかと思い、周囲の町を回ってから帰るというのも、倒せなかったことを反省して、せめてそれ位はと殊勝な心掛けなのかと思いきや、急に帰ってきたら、この町の子ではない男の子を連れて帰ってくるって、まさかお相手探しの為に付近の町を回ってるんじゃないでしょうね」
――――……うわー……。
な、長い……。
まくし立ててる間、それでも冷めた感じの彼を、ただ呆然と見つめてしまって。
長い言葉の間に、ルカをちらっと見上げると。
ルカは慣れてるみたいで、なんかもう、また始まった的な顔で、苦笑いしつつ。オレを見下ろして、ふ、と笑ってる。
いやいや、笑ってる場合じゃ……。
「何を笑ってるんですか。大体あなたはいつも――――……」
「ストップ!」
ルカが、まっすぐ彼を見つめて、そう言った。
「変わらず元気そうで、安心したけど――――……」
ふ、と笑ってそう言ってからルカは、真剣な顔でレジーを見た。
「……魔王倒せなくて本当に悪かった。あと少しだと思って、制止の魔法かけて少し油断した所で逃げられた。……そのせいで魔物も消せなかったから、付近の町を回って、色々強い奴中心に片付けてる。――――……それはちゃんとやってるし、別に、相手を探したりもしてない」
「――――……じゃあその子は何ですか」
ちら、とオレを見ながら、レジーが言う。
「まだこれから、海に出て、何かを倒さなきゃいけねーんだけど。今船を修理中で、出せるようになるのを待ってる。で、その間にこいつ――――……ソラって言うんだけど。 レジーに相談があって、帰ってきた」
「相談、ですか?」
「あぁ、相談」
まっすぐレジーを見つめてそう言ったルカに。
レジーは、ふー、と息を付いて。
足を城の方に向けた。
「中で聞きます」
少し振り返って、ルカとオレを見ながら、歩いていく。
「じゃあ、オレの部屋で。とりあえず、お前だけに話したい」
「わかりました」
言いながら、前を歩いていくレジーの後ろを、ルカと並んで歩き進んでいく。
さっきの話だと。ルカってここに居た時は、男と、してないのかな。
相手が、男の子で呆れたみたいな感じだったし。
レジーは、多分少し年上……リア位かなあ。
前を歩く姿、背筋がすごくまっすぐで、凛としてる。
まくし立ててる時も、「淡々とまくし立てる」って感じって。……なんかすごい。
と、可笑しくなりながら、進んで。
いくつかの廊下と階段を上って、歩き進んだ奥の部屋。
何かもはや道は覚えてない。入り組んだ奥、って感じ。
少し重そうな扉を、レジーが開いて、ドアを支えた。
その横をルカが通り過ぎた。すみません、と言って、オレも中に入ると、レジーは手を離してドアを閉め、鍵を掛けた。
中に入って、部屋の中を見回す。
大きな机、本棚、ソファ、テーブルがあって椅子が6脚。
奥にベッド。
ルカはいつも、ここでお仕事して、生活してるのかなと、思うと。
すごく不思議。
だってなんか、豪華すぎて。
こっちの価値は分からないけど、家具とかも全部、豪華。
ルカとはなんかずっと普通の宿みたいなところで一緒にいるから。
なんか、こんな豪華な部屋に来ちゃうと。
あー、本当に王子様なんだなー、えらい人なんだなあ、と、実感。
ともだちにシェアしよう!