157 / 293
「何だかなあ……」
何だか本当に、絵本の世界みたいな。
……ああ、だから、そうだ。ゲームの世界の、王子の部屋とかそのもので。
そんでもって、なんか、ルカにはこの豪華な部屋がすごく似合う気がして。
あれ、やっぱり、オレが側に居て良い人じゃ、ないのでは???
なんてちょっと思ってしまいながら。
部屋を見回していると。
「ソラ、こっち座れ」
呼ばれて、テーブルの方を指される。
近づくと、ルカの手が背中に触れて、こっち、と言われた所に座る。
オレの隣にルカが座って、ルカの目の前に、レジーが座った。
「ソラ、ですか?」
「あ、ソラです。レジーさん……」
「レジーで、大丈夫です」
オレが頷いた所で、ルカが話し出した。
「――――……こいつさ。別の世界から飛ばされてきたんだ」
「――――……」
――――……まあ。なんとも。端的というか。
……前置きとか、無いの? ……無いか。ルカだもんね。うん……。
そりゃそうだと思うんだけど、やっぱり驚いてるみたいで、レジーは少し目を見開いて、そのまま何も言わず。
黙ったまま、ルカをまっすぐに見つめた。
それから、静かに視線を流して。
今度は、オレをまっすぐ、見つめる。
……グレーの瞳。綺麗で。まっすぐで。
美形が多すぎ。この世界。まあ、キャラデザインに命かけてるゲームだった……。
頭良さそう。冷静な感じ。
ルカのこんな、突拍子もない、こんなセリフですら、なんかもう、全部、理解してるのかな、みたいに思ってしまう。
心の中の中まで見られてる感じがして。視線が逸らせないでいたら。
隣でルカが、くす、と笑った。
「ソラが緊張するから、そんな風に見んなよ」
ルカの手が伸びてきて、頬をぷに、と摘ままれる。
固まってたオレの体が、ちょっと解ける。
「ソラ、嘘はついてない。オレは信じてるから。その前提で聞いてくれると助かるんだけど」
オレを見つめながら、そんな風に言って、最後に、レジーに視線を向ける。
何だか意外そうな顔をして、ルカを見ていたレジーは、少しして、ふ、と笑んで、オレを見つめた。
でも、さっきよりは――――……何だか、少し、視線が柔らかい。
「――――……ではその前提で、聞きましょうか」
レジーが言って。
ルカは、オレの頬から頭に手を移して、クシャクシャ撫でながら。
「こいつさ、魔王と戦ってる時に、ど真ん中の空中から、いきなり落ちてきたんだ」
――――……まあその通りなんだけど。
なんかもう少し言い方ないのかなー。
レジーの眉が寄っちゃったよ……。
なんかもう。
苦笑いが浮かびそう。オレ。
「……落ちてきた、ですか」
「としか言えない感じ。戦ってた場所は、魔王の城……洞窟みたいな場所で、天井は岩とかだから、すり抜けたりは出来ないし、もう本当に空中から落ちてきたとしか――――……で、こいつは、移動魔法も使えないし」
「――――……最初からちゃんと話して下さい」
レジーが、オレを見た。
「オレは、東京ってとこに住んでて。この世界にはないけど、テレビっていう色々見れるものを、見ててたんですけど…… そしたら、そのテレビが、急にものすごく、白く光って……爆発、するのかと思って固まってたら、その白い光に包まれて――――…… で、気づいたら、ルカの側に、落ちて……」
「そこで、初めて、出会ったんですか」
「はい」
「――――……で。ソラに気を取られてるうちに、魔王を取り逃がしたと?」
レジーは、ちら、とルカを見る。
「まあ、そりゃ魔王との戦いのど真ん中にいきなり落ちてきたソラに、少しは気を取られもしたけど……後少しだって余裕かましてたら、逃げられたっていうのが正しい」
「――――……」
最初、オレのせいに。してたのに。
……もう、オレのせいには、しないんだ。
………………むしろ、庇ってくれるんだ。
…………何だかなあ。ルカって……。
何だか少し、じーんとしてると。
「それで、言葉は悪いですけど、そんな怪しい出現をした彼と、どうすればそんな関係になるんですかね? 男の子自体、初ですよね?」
ふ、と息を付くレジーに、ルカは、はは、と笑った。
「男は初。――――……オレ、結婚してもいいかなと思ってるけど」
ああ。もう、次は、さっきのとは、別の意味で。
………ほんっとーーに、何だかなあ、ルカ。
まだ落ちてきたしか、話してないのに、そんな事言って。
レジーがびっくりしちゃって、目を見開いてるし。
ともだちにシェアしよう!