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「鈍い?」
「今、結婚と言いましたか?」
絶対聞こえていただろうに、レジーは敢えて聞いてるみたい。
「言った。聞こえただろ」
ふ、とルカは不敵な感じで笑う。
「――――……結婚は全く興味がないと、言い続けていませんでしたっけ?」
レジーの言葉が、もう隠すことなく、呆れた感じを含んでいる。
……まあ……そうだよね。
うんうん。呆れるの、すっごく分かります。
心の中だけで、とってもレジーに同意していると。
ルカは、ため息をついた。
「まあ。そこまで信用して、ずっと居たいと思う奴も居なかったし」
「――――……」
そんな事言ってるけど。
……信用できるかできないかの話で言ったら……。
「良く分かんねえけど、なんかソラの事は最初から信じられたっつーか」
……いや、おかしいよね、ルカ……。
心の中で突っ込んでいたら。
「……その怪しい登場をした人物を、よくも最初から信じられますね」
そうだよね、そうそう、その通り。
――――……今の所、レジーの言う事は、100パーセント、オレと意見合ってます。
うんうん。ルカがおかしい。
「ソラ、魔王を本気で怖がってたし、あっちの仲間じゃねえって思ったのと。こいつの着てた服がオレが見た事の無い素材だったのと。あと、こいつが現れた時のあの白い光も異様で。……ソラの言ってる事は、辻褄はあってた」
呆れた顔のまま、ルカの言う事を聞いていたレジーは、ふ、と眉を顰めた。
「王子も、白い光を見たんですか?」
「ああ。……って、言わなかった?」
「ソラは言いましたけど、あなたは言ってません」
「そうだっけ?」
ルカがオレを見てくるので、うん、と頷くと。
「だから、戦ってたら、急に真っ白になって。一瞬、爆発でもすんのかと身構えてたら、白い光がすぐ消えて、ソラが、落ちてきた」
「それで全てですか?」
「……全てだよな?」
レジーに聞かれたルカが、オレの方を見て、聞いてくる。
「……多分、そうだと思う」
オレが頷いたのを確認して、レジーも、そうですか、と頷いた。
考え深げに一点を見つめたまま動かないレジーに、ルカはまた話し始める。
「それで、レジーに聞きたいのは……こんな話をどこかで聞いた事がないかっていう事と――――……もっと踏み込めるなら、帰る方法か……それか行き来できる方法があれば一番良いんだけど。 ……それか。帰らなくて済む方法か。とにかくそこらへん、なんでもいいから、調べたい」
行き来できる方法があれば、一番いい。
ルカの言葉に。
確かに、そうかも、とは思うけど。
そんな事、出来るんだろうか。
しばらく黙っていたレジーは、静かに立ち上がって、オレとルカを順番に見つめた。
「――――……少し、調べてきます。昼は?食べましたか?」
「さっき菓子食ったから、そんなに空いてねえよな?」
「うん」
「……一応用意させます。この部屋で食べますか?」
「ああ。……部屋の前に置いとけって言っといて」
レジーは一瞬不思議そうな顔をした後。
「――――……はーー、本当に、王子は……」
ため息をつきつつ、レジーが立ち上がった。
「食事を運ばせるのは――――……この部屋で、良いんですか?」
「ああ。ここで良い」
……どういう意味かよく分からないレジーの質問に、ルカはまっすぐに見つめ返して、頷く。しばらく意味不明に見つめ合った後。レジーは、分かりました、と言った。
「……程々に。昼が済んだら、書物庫に来てください」
「ああ、分かった」
レジーが部屋を出て、ルカが部屋に鍵を掛けた。
「最後の辺り、どういう意味……?」
オレがルカの側に寄りながら聞いたら。
ルカは、オレを見下ろして、目が合うと、ニヤ、と笑った。
「レジ―は鋭くて、お前は鈍いってことだな」
「……??」
さらに意味が分からない。
「何それ、オレが鈍いって……」
笑うルカに抱き上げられて。ひょいひょい、軽々と運ばれて。
ベッドに降ろされたところでようやく、その意味を、知った。
はーー、本当に、王子は、とか。
程々に、とか。
……そういう意味か。
なんか。会ったばかりの人に、昼間からそんな事するのかと思われたのかと思うと、なんか恥ずかしくて、眩暈がしそう。
いくら向こうが呆れながらも、否定しないで出て行ったって。
うわーん……。ルカのバカ……。
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