159 / 286

「ズルい」

  「ちょっと待って……」    オレに乗っかって来ようとするルカを見上げながら、思わずその胸に手を付いてしまう。 「調べに、きたんだよね?」 「レジーが調べてる間は邪魔しない方がいい」 「……て……手伝わないの?」 「あいつが先に調べてくるから昼食べて来いって言ったんだから、今は行かなくていい」 「じゃあ、昼早く食べて……」 「まだできてねーだろ」  ルカの胸についてる手を、掴まれて、ベッドに押さえつけられる。  うまく押し乗られて、真上にあるルカの顔をただ見上げる。 「……ドアの前に置かれる時に声はかかるから。それまで」 「――――……っ……そんな、早く、終わるの?」  思わず言ってしまうと。 「なるべく、終える」 「……っ何で、お城で一番に、それなの……」  ちゅ、と首にキスされて、最後の抵抗で聞いてみると。 「もうオレ、さっきから、オレの部屋でお前抱きたかったんだよ」 「――――……っ」 「やっぱりここがオレの場所だから。そこにお前が居るの実感したいし」 「……っっ」  ず、ずるくないかな、そんな、言い方……っ。 「……っどうせ――――……そんな事、いっぱい……言ってきたんでしょ、ルカ……」  首筋や耳や頬を、舐めたりキスしたりしてくるルカにそう、言ったら。 「何だそれ?」  またまっすぐに見つめられて、ん?と聞かれる。 「いっぱい、ルカにくっついてた女の子達にも……言った、んでしょ」  思わず、仏頂面になってしまう。  なんかもう。やっぱり、したくない。  ここで、いっぱい、色んな子と――――……。  なんかすごい――――……女々しい女子みたいな考え方。  嫌かも、こんなこと、考えるのも……。 「……ああ、そーいうことか」  しばらく黙ってたけど、オレの膨らんだ頬を片手で潰しながら、ルカが笑う。 「嫉妬してんのか。 はは、可愛いな、ソラ。珍し」  ……決して。珍しく、ないけどね。  ルカの女の子の伝説を聞くたびに、ムカムカしてますけど。  別に。関係ないとも思ってるけどさ。  …………ムカムカ。 「ここには、誰も連れ込んでねえよ」 「――――……ん??」  よくもそんな大それた嘘をさらっと……。  そう思ってると。 「ここ、色んな情報がある訳。あの棚とか鍵かかってるし超頑丈ではあるけど、信用できない奴は入れない。別に相手を全員疑ってた訳じゃねえけど、面倒だろ、こっちは疑ってるから入れないで、こっちは平気そうだから入れるとかやってたら。――――……だから、誰もここには入れてない」 「――――……」 「誰に聞いてもいいぜ、オレのこの部屋には、そういう相手は入れてない。……ああ、さっきレジーが、食事ここで良いのかって、変に聞いてたろ?」 「……うん」 「ここでそういう事するつもりかっていう意味だから。レジーも知ってる。あとで聞けよ」 「――――……」  ルカは、頬を潰してた手を、優しい触れ方に変えて。  オレを、まっすぐ、オレを見た。 「初めてここで、抱きたいと思ってんだけど」 「――――……っ……」  なんか。  ……すっごい、ズルいし。  そんな風に言われると、断ろうって思えなくなるんだけど――――……。  だからって。  なんかもう。感情が色々混ざってて――――……訳わかんなくなって。  答えることが出来ないし。  じっと、見つめ返してると。  ふ、と瞳が優しく笑う。 「ソラ、OKならキスして」 「――――……」  なんかもう。  ――――……キスするしかない。  最後まで、ルカを見つめたまま。  そっと、キス、しようとしたら。  触れる前に少しだけ離れるルカ。 「……?」  キスしろって言ったくせに、何で――――……。  ルカを見上げると。 「キスしたら、オレに抱かれたいって意味だけど?」 「――――……」  わざわざ確認するとか。  意地悪……。  む、としたまま。  ぶつけるみたいにキスしたら。  クッと笑って。 「――――……はは。かわいいな……」  楽し気に笑いながらルカがオレを見つめる。  ドキ、と、鼓動が速くなる。 「――――……」  すぐに、オレの後頭部に手を回してきて。 「――――……ソラ……」  囁かれるのと一緒に、ルカに押し付けるみたいに、引き寄せられて。  すぐ唇が、深く重なってきて。  心臓の音が大きすぎて。なんか。周りの音が、何も聞こえない気がする。  ぎゅ、と、瞳を伏せた。

ともだちにシェアしよう!