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「ズルい」

  「ちょっと待って……」    オレに乗っかって来ようとするルカを見上げながら、思わずその胸に手を付いてしまう。 「調べに、きたんだよね?」 「レジーが調べてる間は邪魔しない方がいい」 「……て……手伝わないの?」 「あいつが先に調べてくるから昼食べて来いって言ったんだから、今は行かなくていい」 「じゃあ、昼早く食べて……」 「まだできてねーだろ」  ルカの胸についてる手を、掴まれて、ベッドに押さえつけられる。  うまく押し乗られて、真上にあるルカの顔をただ見上げる。 「……ドアの前に置かれる時に声はかかるから。それまで」 「――――……っ……そんな、早く、終わるの?」  思わず言ってしまうと。 「なるべく、終える」 「……っ何で、お城で一番に、それなの……」  ちゅ、と首にキスされて、最後の抵抗で聞いてみると。 「もうオレ、さっきから、オレの部屋でお前抱きたかったんだよ」 「――――……っ」 「やっぱりここがオレの場所だから。そこにお前が居るの実感したいし」 「……っっ」  ず、ずるくないかな、そんな、言い方……っ。 「……っどうせ――――……そんな事、いっぱい……言ってきたんでしょ、ルカ……」  首筋や耳や頬を、舐めたりキスしたりしてくるルカにそう、言ったら。 「何だそれ?」  またまっすぐに見つめられて、ん?と聞かれる。 「いっぱい、ルカにくっついてた女の子達にも……言った、んでしょ」  思わず、仏頂面になってしまう。  なんかもう。やっぱり、したくない。  ここで、いっぱい、色んな子と――――……。  なんかすごい――――……女々しい女子みたいな考え方。  嫌かも、こんなこと、考えるのも……。 「……ああ、そーいうことか」  しばらく黙ってたけど、オレの膨らんだ頬を片手で潰しながら、ルカが笑う。 「嫉妬してんのか。 はは、可愛いな、ソラ。珍し」  ……決して。珍しく、ないけどね。  ルカの女の子の伝説を聞くたびに、ムカムカしてますけど。  別に。関係ないとも思ってるけどさ。  …………ムカムカ。 「ここには、誰も連れ込んでねえよ」 「――――……ん??」  よくもそんな大それた嘘をさらっと……。  そう思ってると。 「ここ、色んな情報がある訳。あの棚とか鍵かかってるし超頑丈ではあるけど、信用できない奴は入れない。別に相手を全員疑ってた訳じゃねえけど、面倒だろ、こっちは疑ってるから入れないで、こっちは平気そうだから入れるとかやってたら。――――……だから、誰もここには入れてない」 「――――……」 「誰に聞いてもいいぜ、オレのこの部屋には、そういう相手は入れてない。……ああ、さっきレジーが、食事ここで良いのかって、変に聞いてたろ?」 「……うん」 「ここでそういう事するつもりかっていう意味だから。レジーも知ってる。あとで聞けよ」 「――――……」  ルカは、頬を潰してた手を、優しい触れ方に変えて。  オレを、まっすぐ、オレを見た。 「初めてここで、抱きたいと思ってんだけど」 「――――……っ……」  なんか。  ……すっごい、ズルいし。  そんな風に言われると、断ろうって思えなくなるんだけど――――……。  だからって。  なんかもう。感情が色々混ざってて――――……訳わかんなくなって。  答えることが出来ないし。  じっと、見つめ返してると。  ふ、と瞳が優しく笑う。 「ソラ、OKならキスして」 「――――……」  なんかもう。  ――――……キスするしかない。  最後まで、ルカを見つめたまま。  そっと、キス、しようとしたら。  触れる前に少しだけ離れるルカ。 「……?」  キスしろって言ったくせに、何で――――……。  ルカを見上げると。 「キスしたら、オレに抱かれたいって意味だけど?」 「――――……」  わざわざ確認するとか。  意地悪……。  む、としたまま。  ぶつけるみたいにキスしたら。  クッと笑って。 「――――……はは。かわいいな……」  楽し気に笑いながらルカがオレを見つめる。  ドキ、と、鼓動が速くなる。 「――――……」  すぐに、オレの後頭部に手を回してきて。 「――――……ソラ……」  囁かれるのと一緒に、ルカに押し付けるみたいに、引き寄せられて。  すぐ唇が、深く重なってきて。  心臓の音が大きすぎて。なんか。周りの音が、何も聞こえない気がする。  ぎゅ、と、瞳を伏せた。

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