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「感動」

 ゲームの世界でキャラを操っていた、というのがどうにも言いにくいので、そこだけは「本」に置き換えて、話してみる事にした。 「――――……元の世界に居る時、この世界の本を見た事があって。魔王や魔物や、この世界の事や、ルカ達の事も見てて……」 「――――……」 「全部一緒かと言われると……ミウとか居ないし、町の人とか覚えてないし……町も完全には覚えてなくて……お城もこんな感じ、ではあるけどはっきりとは……」  言ってる内に、きっと全然意味が分からないんだろうなあと思いながら、悩みながら言っていると。 「……魔王の変異体も見た事があったんですか?」 「……はい」  だって直前まで、ゲームで戦ってたんだもん……。知ってる。  と言っていいのか、オレの戦っていたものと、あれが同じものだったかも分からないけど。  でも、ルカたちは、皆、見た目も性格もできる事とかも、同じ。  だから、きっと、何かしらの関係はある。  ……意味は分からないけど。 「――――……先程、信じるという前提で話は聞きましたが。やはり私はまだ、あなたを完全に信じてはいないんですが」  レジーが言う。  まあでも。そりゃそうだよね。よく、分かる……。 「王子は、本当に、完全に信じているんですか?」  レジーの視線がルカに流れて、オレもそれを追って、ルカを見た。  すると、ルカは、オレを見下ろして。ふ、と笑って。 「ああ、信じてる」  即言い切って。 「――――……」  そんな簡単に、言い切るとか……。  何だか、不覚にも感動してるオレの頭に手を置いた。 「言ってる事意味わかんねえのは、ほんとにそうだからだと、思ってる」 「ルカ……」 「だから、レジーも、信じた上で調べてくれよ」  レジーに向けるルカのまっすぐな視線。  レジーは数秒黙っていたけれど。少し息をつきながら。不意に微笑んだ。 「分かりました、王子」  なんか。  急に、優しく笑んだレジーに、ちょっと驚いた。  その時だった。  急に、書物庫のドアの方で、ドンドン叩く音と、大きな声。 「ルカ―! あけろーー!」  あ。絶対ゴウだ。リアとキースも居るのかな。  ちょっと離れてたので、何だか嬉しくなりながら、ルカと顔を見合わせた。 「今開けるから騒ぐなよ」  ルカがそう言って、ドアの元に近付きながら、呪文を唱える。  扉が開くとともに、ゴウとキースとリアが現れた。 「おう。ルカ、ソラ」  良かった、ゴウとキース、元気そう。 「問題なく倒せたか?」  ルカがすぐにそう聞くと、ゴウとキースが頷いた。 「全然問題なし。――――……でも、オレ達にとっては、かな」    キースの言葉に、ルカがキースを見つめる。 「あれ、一般の人達には倒せないな。やっぱりあそこらへんの魔物、強くなってたんだろうね。魔王があの付近を離れたはずだから、その内弱体化するといいけど……」 「ああなると、海の魔物とか、どんなんが来るか、ちょっとうんざりだなぁ……」  キースとゴウの言葉に、そーか、とルカが頷く。  そこに、レジーがやって来た。 「魔物退治に行っていたんですか?」 「ああ、レジー、ちょっと久しぶり」 「元気?」 「相変わらずテンション低いな?」  キースとリアとゴウがレジーに話しかけて、笑ってる。  ああなんか。  今日少しだけ、離れてたけど。  やっぱりこのメンバーで揃うと、ほっとする。

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