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「選べるなら?」
「なあ、ソラ」
「ん?」
「例えばさ」
「うん」
急にマジメな顔をして、オレを見つめるので、オレも、まっすぐルカの瞳を見つめる。
「元の世界に帰るか、こっちに残るかて、選べと言われたら何て答える?」
「――――……オレが、決めれるとしてだよね……?」
なんか、皆にも言ってたよね、それ。
「そう。選べるなら。何て、答える?」
そんな事、ルカが言うまで、思ってもみなかったんだよね。
だって、来る時、完全に意志は無視だったから。
戻れるとしてもそうなんじゃないかと思ってるし。
残るにしても、帰れないから残るだけ。
とにかく、完全に受け身だと思ってた。
今も、そう思ってる。決められる訳、ないような。
でも多分、ルカが聞きたいのはそういうことじゃないんだろうな。
実際出来るかとかじゃなくて。
オレが、どっちを選ぶ気があるのか。それだけ。
「――――……」
少し考えてみるけど。
即答は出来ない位、何だか色んな考えが浮かんでくる。
「――――……ルカ、怒んないでね?」
「何いっても、怒らねえよ」
「……ルカ達と居るのは楽しくて、もう帰れないなら、ここで生きてくのもありかなとか。頑張って生きようとか。そう思う位な気持ちは、ある」
「ん」
「でも、向こうには、家族や友達も居るし……」
「ん」
「特に家族は――――……オレが居なくなって、心配してるのかなって考えると、結構……辛い」
「ああ」
「……来たばかりの時なら、向こうに帰りたいって即答したと思う」
「そうだよな」
でも。
……でも。今は……。
「――――……今は、どうしようかなって、迷う位には……」
「――――……」
「……こっちの世界も、好きみたいで……」
ルカがしばらくオレを見つめて。
それから、ふ、と笑んだ。その手がオレの頬に触れる。
「……ソラ」
「――――……」
「オレと一緒に、居たいって、思う?」
「……思うってば。何回も言ってるでしょ。…………なんでか、分かんない、けど」
最後そうくっつけて言うと、ルカは、クッと笑って、ぶに、と頬を摘まんだ。
「最後の余計だろーが」
「……だって」
男だし。えらそーだし。横暴だし。……ほんと。……エロいし。
男のオレを、めちゃくちゃ、抱くし。
ほんとなら全然、意味わかんないようなとこだしさ。
一体どーして、こんなに嫌じゃなくて。
今まで20年も生きてたきた世界と比べても。
こんなに僅か何日かしか過ごしてないのに
こっちかむこうかと聞かれて、どうしようと悩むのか。
魔王とか魔物とか怖いし、冒険とか大変だし、正直、ここに居たいと思うなんて。自分でも全然意味、分からないけど。
でも、オレ、向こうに帰りたいって、やっぱり、即答できない。
ただ、困るのは、こっちに絶対残りたいとも、即答できないこと。
戻れないなら、ここで生きていこうって覚悟したけど。
後悔しないように、ちゃんとここで生きようって思ったけど。
戻れるとしたら、なんて選択肢が増えちゃうと。
うぅ……すっごく困る。
生きてきて、一度も考えた事のないことだもんなあ……。
二つの異なる世界で、どっちで生きてくかなんて。
考えた事ある奴 ……居ないよね?
オレが知らなかっただけで、結構居るのかな。
うーん、確かめようもないな。
うんうん悩んでいると、ルカが、隣でぷ、と吹き出した。
「悪かった」
「え?」
「ソラに難しい事考えさせた」
「何それ、超失礼」
むーー、とルカを睨むと。
「選べるならどーすんのかなって、お前にも聞いてみたくなっただけだからいーよ、もう考えなくて。まあ普通、そんなの選べねえだろうし」
ふ、と笑って、ルカが話しを終えようとしてる。
……オレそんなに難しい顔してたのかな。
「じゃあ、ルカは?」
「ん?」
「……オレと一緒にオレの世界に来るか、オレと別れて、こっちに残るかって聞かれたら、どうする?」
…………まあルカは王子だし。
――――……この世界を捨てるなんて、出来ないだろうけど。
「……ふうん」
ルカはすごく面白そうに笑う。
「聞きたいか? それ」
クスクス笑って、ルカが、そーだな……と考えて。
すぐに。
「魔王を倒してなかったら、放ってはいけないから、倒すまではいけない。倒してるなら、お前と行ってもいいよ」
「――――……」
「待てるなら、魔王を倒すまで待っててもらう」
「――――……え。……倒せてたら、オレと、行ってくれるの?」
「いーよ。 違う世界、見てみてえし。ソラがいるなら」
びっくりしてるオレに。
いとも簡単に。
――――……ルカは、そう言った。
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