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「縁のない」

  「ていうか、いいの、王子なのに、そんな事言って」  そう言ったら、ルカはクッと笑って。 「魔王さえ倒せば魔物も居なくなるだろうし。オレが居なくても何とかなるだろ」 「……でも。魔王倒したら、ルカは王様になるんでしょ」 「魔王倒せば、そんなのもいらねーかもだし」 「――――……」 「何にせよ、倒すまでは無理だけどな」 「――――……」 「見てみたいしな。ソラの世界」 「……でもオレの世界、色々めんどくさいよ?」 「ふうん……?」 「戸籍とかないと色々大変だし。ルカ目立つからひっそり生きるとか無理だろうし……こっちみたいに広くて、自由で、誰でも受け入れてくれたりしないよ?」 「――――……」  黙って聞いてたルカが、よく分かんねえけど、と、可笑しそうに笑ってオレをぐりぐり撫でた。 「お前が聞いたから答えたんだけど。まあ。ちょっと考えただけ。スマホ? 使ってみたいとか」 「あ、スマホ?」  そうなんだ、とちょっと笑ってしまう。 「行き来できたらいいけど、そんな魔法は知らねーしなぁ。……つか、あんのかな、そんな魔法も、もしかして。知らねーだけか……」 「……どうなんだろ」  魔法かあ。  ……魔法ねぇ。  未知だから、ないとも言えないし。ルカが分かんないのにオレが分かる訳ないしな。  ……とりあえず、なんかルカは。やっぱりすごい自由だなーと驚いた。  オレの世界に行ってみたい、魔王倒してれば、王子でもあっち行くの?     オレが居るなら……。  ……オレが居れば、見た事もない世界にでも、来てくれる選択肢も、あるのか。と思うと。変なの。ルカって。  と思いながら、やっぱり嬉しいと思ってしまう。  ルカを、父さんや母さんや兄貴に、紹介したら。  皆、何て言うかなあ。  すっごい驚くだろうなあ。  ……ルカは、結婚するとか言っちゃいそうだから。  余計ものすごく、驚かせるかも。  こんな強そうな、得体のしれない自信満々の人に、オレが連れ去られてしまう……とか。うーん、絶対、すごい心配されそう。  ――――……なんて。そんな変な絵まで浮かんで。  んな事あるはずないし、と、自分で突っ込んでいると。  遠くから、王子ー!と呼ぶ声。 「いいよ、行ってきて。オレ、適当に色んな人と話してるし。ミウと遊んでるし」 「――――……ん。また来る」  クス、と笑って、オレの頭をぐりぐり撫でて、ルカが歩いていく。  その後ろ姿と、ルカを待ってるたくさんの人達の笑顔。  王子。  ――――……ここに来たら、ルカがめちゃくちゃ「王子」って呼ばれるのをよく聞く。  リアたちは王子って呼ばないし、まあ町の偉い人達は、王子って呼んでたような気もするけど、ほとんどの人が、ルカって呼んでたし。  王子、か。  うーん、ほんと、改めて思うけど。縁のない人種。  勇者も。魔王もだけど。  ……ていうか、剣士も魔法使いも騎士も、だけど。  なんて考えていたら。  ルカが来てから、ふわふわと空に浮かんでいた、なんだか空気を読んでる、可愛い可愛いミウが、ぽふ、とオレの膝に収まった。 「――――……つか、お前もだなあ~」  クスクス笑ってしまう。  こんな空飛ぶ、ふわふわの可愛い生き物も。  ほんとなら、縁のない生き物。    はー可愛い。 「明日かな明後日かなー。海に出るんだって。ミウは、海知ってる?」 「みゃ」 「……知ってる??」 「みゃ?」  ……頷いたりはしないんだよなあ。  分かってるのか分かってないのか、分からない。  でも果てしなく可愛い。 「ルカが、ミウも連れてくって言ってたからさ。一緒に行こうね?」 「みゃ」  ――――……今のはなんか、頷いたような、気がするような。 「ミウが好きな食べ物も持って行こうね」  よしよし、とナデナデしながら、テーブルにあるものを、少しずつ手に乗せる。 「何でも食べる気がするけど、ほんとは何が好きなのかな~?」  少しずつ食べさせながら、反応を見ようと思うのだけど、うーん、何食べさせても、ひたすら可愛いだけ。 「……なんでもいいか、ミウは」  クスクス笑うと、また嬉しそうだから、余計にこちらも笑ってしまう。  

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