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「月が滲んで」

   大騒ぎの宴が終わって、皆と別れた。  リアたちは皆、まだ友達たちと飲んだり泊まったりするらしく、お城には戻らないみたい。レジーは片づけを指示するとか、言ってた。  リアがミウは引き取るよーと言ってくれて、ミウも大丈夫そうだったので、ご機嫌のルカと2人、お城に向かって、歩き出した所。  月がすごくキレイ。星も、すごくキレイ。  日本ではきっと、見られない位の数の星。  高い建物はお城だけで、それ以外は何も無いから、空がとてつもなく広く感じる。  隣を歩いている、勇者の王子は、何だか物凄く、ご機嫌で。  ただ歩いてるだけで、何も話してないんだけど、すごく笑顔だ。  ……結構飲まされてたから、軽く酔ってるのもあるのかなあ、なんて思いながら、隣のルカのものすごいゆっくりな歩き方に合わせる。 「……皆、ほんと好きだね、宴」 「ん? ……ああ。そーかもな」 「怖い事、いっぱいあるとこなのにね。……皆、すごく楽しそう」 「んー? ……逆じゃねえの」 「逆?」 「いつ何があるか分かんねえから、楽しんどくんだろ?」 「――――……」  ――――……そう、なんだ。  なるほど……。 「皆、そう覚悟、してるの?」 「……まあ、してはいると思うけど。特に戦いに出る奴は」 「そっか」 「まあでも……とりあえずオレは、死なねーけど。ソラ、置いては」 「――――……」  また何言い出したのかな。そう思いながらルカを見ていると。 「オレが死ぬなら、お前道連れな?」 「……なにそれ。怖い……」  苦笑すると、ルカは面白そうに笑った。 「心配で残せないからもし死ぬなら道連れにする。――――……けど、ソラを死なせたくないから、オレは絶対死なない」 「………………???」 「……意味分かってないな、お前」  クスクス笑うルカ。 「だから、お前を死なせないために、オレは絶対死なないっつってんの」 「……うん。よく分かんないけど。分かった」 「は、よく分かんないって。――――……まいっか」  ぐりぐり頭、撫でられる。 「あ。そうだ、ルカ」 「ん?」 「――――……オレ、もう嫌いって、言わないから」 「――――……」  きょとん、とした顔。  あ、ちょっとこの顔は、可愛いかもしれない。 「――――……あぁ。……キースか」  なんかさっき、話してたもんな。……つか言わなくていいのに、とか、ぶつぶつ言って。 「……まあ、いいか。……ん。言うなよ」 「うん」 「大好きって言っとけ」 「――――……」  その言葉に、ちょっと眉が寄ってしまう。 「ほら、言ってみな」 「――――……」  改めてそんな風に求められると、ものすごく恥ずかしいというか。  そんな素直に言える訳もない。 「早く」  そう言われて。む、としながら。 「――――……大、好き……」  ぼそっと言うと。  ルカは、一瞬固まってオレを見つめて。  お前……と笑い出した。 「可愛く言えないのかよ、もっと」 「……急にそんな事求められても、無理」 「急にじゃなきゃいいのか?」 「……どういう意味??」 「あとでゆっくり言わせるからいいや」 「……ど、ういう意味?」  ちょっと引きながら同じ言葉を繰り返すと、ルカは、オレを見て、可笑しそうにまた笑う。 「分かってそうな言い方だよな」  よしよしと大きな手が、頭を撫でる。 「早くオレの部屋に、帰ろうぜ」 「……っ無理やり言わせるのはどうかと思うからね」  そう言うと、ふ、と笑って、スルーされる。 「無理やりは良くないんだからね??」 「分かったって。無理やりじゃなきゃいいんだろ?」 「――――……」  ベッドの上で、言わせる気なら、それは無理やりと言うのだからね、と思うけど、そんな事は口にできない。むむむむ、と睨んでると。 「お前さー」  クスクス笑いながら、ルカが斜めに見下ろしてくる。 「……ほんと、バカだな、ソラ」 「……何がだよっ」 「そんな顔して焦るから、余計、からかいたくなるんだって」  ルカの右手が、オレの顎から頬にかかって。ぶに、と口を突き出されるみたいな、変な顔にされる。 「やめ――――……」  その手を離させようとしたら。  そのまま引き寄せられて。唇が、重なってきた。  すぐに頬を潰されてた手は外されて、舌で、唇、なぞられる。  口、開けろって、事だろうけど。  ……ムカつくから開けてやるもんか。からかってばっかで、もう。  そう思って、頑なに唇、閉じてると。  ルカがクスッと笑うのが分かった。  ぐい、とルカの腕に抱き寄せられて。すごく密着したと思ったら。背中に触れたルカの手が、背筋に沿って、すぅっとなぞった。 「……っあ」  ぞくん、として。びっくりして開いた唇に、舌がねじ込まれて。 「……ぅ、んっ――――……」  う、わ、卑怯だ。  ずるい、ルカ、くすぐるとか、無しだって。    ずるいと言いたくて、引き離そうと藻掻くけど。抱き込まれて、覆いかぶさるみたいにキスされて。舌、口の中で好きなように動かれて。 「……っん、ン……――――……ン、ぁ……」    もう完全に動けない。………ルカ、ずるい。  涙が滲む目をこじ開けて、ムカつく勇者をちょっと睨むけど。  ルカの後ろに、綺麗な月が、滲む。  涙で滲んでるせいか、ものすごく綺麗に、浮かんで見える。  外で、キスされながら。月に見惚れるとか。   「――――……ンん……る、か」  名を呼ぶと。  ルカが瞳を開いて、オレを見て。ふ、と瞳を細めて笑んで。  なんか、なんか。……とっても、ずるくてムカつくのだけど。  ……自然と手が動いて。ルカに、しがみついて、しまった。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ お知らせ♡ ルカソラの番外編「スイカ割り」投稿してます♡ https://fujossy.jp/books/25142

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