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「お城の朝食とジーク」

   朝いつものようにルカの腕の中で目が覚めた。    今日は朝は何もされず。起きてすぐにルカに連れられて、でっかいドアの、広い部屋に通された。広い部屋の真ん中に大きめのテーブルがあって、そこに、リア、ゴウ、キースとレジーも座っていて。皆と挨拶を交わす。 「ソラ、よく眠れた?」 「うん。リア、昨日、ミウありがと」  リアの隣に腰かけると、リアと一緒に居たミウが、ちょこんとオレの膝に乗っかってきた。 「おはよ、ミウ」  よしよし、と撫でまくっていると、ルカが隣に腰かけながら笑う。 「そんなに可愛いか?」 「死ぬほど可愛い」  即答すると、更に笑われる。  そんなやりとりをしてたら、ドアが開いて、食事が運ばれ始めた。  なんか、すごい、お皿が豪華。まあ、やっぱり料理は茶色系が多いけど。でも、果物や実とか、色のあるものも飾られてて、普段見てるのよりは、すごく綺麗。  皆と会ってからいつも、宿屋の下とか飲み屋とか、町の食堂みたいな感じのとことか、あとは、外でご飯食べてたから、お城のこんな広い部屋で、何人もの人が運んできて、こんな豪華なのとか。……なんか、不思議。 「どした?」   ルカがオレを見て、そう聞いてくる。 「んー……なんか、いつもと違って、豪華すぎて」 「一応、王子なんだよな、オレ。城だといつもこんなだけど?」  クスクス笑うルカ。へーそうなんだーすごーい……と、感心してると、ルカはすぐにおかしそうに笑った。 「冗談。いつもは全然こんなじゃねえよ、な?」  リアたち皆も、笑いながら頷く。 「そーだよ、こういうのは、特別な時だけ」 「え。そうなの?」 「そうだよ。昨日一緒に昼食ったろ? 普段はあんな感じ。な、色んなもの食べてみな、ソラ。城の料理人が作った料理だから。この世界の食べ物……ていうより、オレがずっと食べてきたものだから」 「――――……」 「何となく、これ食べれば、オレが好きな物分かるはず、ってものを色々作らせた」  そんな風に言うルカをじっと見つめてしまう。 「オレに、色々食べさせる為にこんなにいっぱいあって豪華なの?」 「ん? ……いや、もともとはそうじゃねえよ」 「もとは、料理人たちが久々に帰って来た王子に好きなものを食べてほしいからと言ってましたよ」  レジーがそう付けくわえてくる。 「ソラの為だけじゃないので、そこまで必死に覚えなくても大丈夫ですよ、正直、王子なんて、なんでも食べますから」 「待てよレジー、何か身も蓋もねえな」  そんなやりとりに、おかしくて、クスクス笑ってしまう。  確かにルカ、なんでも食べるイメージ……。 「つか、こいつら全員、なんでも食うから」  ルカが、三人を親指で指しながらそう言うと、 「それ、ルカだから」  ルカに指さされたリア達は、皆で総ツッコミしてる。 「立ち寄った町で、変な魔物を焼いたやつとか、一番に味見すんの、ルカだよな」  ゴウが嫌そうなのがちょっと意外。 「そうだよ、色とか形とか、全然気にしないし。オレは意外と無理なのあるからね」  キースが無理なのが有るのは、イメージ通り。 「そうよ、あたしだって、変なの無理無理」  うん、リアも、なんてったって、女の子だもんね。  そう思いながら、膝の上のミウに、先にちょっと果物とかを食べさせてあげていると。 「オレ、変な虫は無理だぞ、リアは、よくわかんねえ虫煎じるじゃねえか」  ルカのそんな言葉に、思わず隣のリアをガン見してしまう。  変な虫……。 「え、あれは、薬としてだし!」  えっと。  ……ここにきた翌朝に飲んだジュースに、変な虫、入ってたんだろうか。  あの、激マズの、見た目だけオレンジジュースの……。  ひーやだやだ。考えない。もう聞かないぞー。  思わずミウをぎゅう、と抱き締めていると。 「ソラの顔が死にそうになってますが」  レジーの声が響いて、ぴた、と止まって、皆がオレを見る。 「――――……とりあえず、食べましょうか」  レジーの声に、苦笑いで皆が、頂きますと口々に言って、食事が始まった。 「ソラ、ごめんね。今言った虫とか、特殊なやつだからね」  リアがクスクス笑いながらそんな風に言う。 「うん……」  そうであって欲しい……。  あのジュースに入ってたのかどうかが、怖くて聞けない。  世の中、聞かない方がいいこと、あるよね、うん……。 「失礼します」  配膳してた人達が居なくなったドアから、一人の男の料理人が入って来た。 「王子、お呼びだと聞きましたが」 「あぁ。ジーク、こっち来て」  黒の短髪。腕、すごく太い。がっちりしてる。  料理人の白い服のまま。ルカの隣に来た。  少し年上? レジーと同じ位、かなあ……?  なんかすごく、まっすぐな印象。近くで見ると、瞳は緑、かな。 「こいつ、ソラ」 「はい」  ルカがオレを指して言うと、ジークと呼ばれたその人は、ちら、とオレを見て頷いた。 「今度城に帰ってきたら、料理作らせてやってほしいのと」 「料理、ですか?」  ルカの言葉の途中で、ジークが聞き返す。 「ああ。料理とか菓子とか、興味あるって」 「見習いとして、ですか?」 「いや。見習いっつーか――――……今、オレと結婚しようぜって言ってるとこ」 「は??」  ジーク、と呼ばれた彼は。  ルカをマジマジと見つめてから、それからオレをまっすぐに見た。 「――――……王子が結婚、ですか?……」  そのまま、しーん。とひたすら無言。  かなり長い長い、沈黙。  こっちの皆が耐えきれずに笑い出した。 「ジークが固まった」  リアがめちゃくちゃ楽しそうに笑ってる。 「それは、固まりますよね……」  レジーがうんうん、と、なんだか気の毒そうに、ジークを見ている。 「本気で言ってますか?」  ジークが真剣な顔でルカを見つめる。 「本気」  ルカが、ニヤニヤしながら答える。  ……そういう顔で笑いながら答えると、冗談に聞こえると思うんだけど。ルカっぽいけど。どーなんだ。  オレが何となく、ミウをナデナデしながら、料理は食べれずに、二人を見ていると。   「あー……分かりました」  と、ジークは答えながら、何かを考えているみたい。  …………何が、分かったんだろう。  じっと、見てると。 「ああ、あれですか?」 「……??」  急に、分かった、という顔でジークはオレを見て。 「結婚する王子の為に料理の修行をしたいから、私に習いたいと、そういう事ですか?」  ジークは、そう言った。  なんか周りの皆は面白そうな顔でこっちを見ながら、食事続行中……。  えーと。  ……あれ? オレ、言ったっけ、修行したいとか……えーと。  結婚する王子の為にって。  それはもう、花嫁修業かな……?  

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