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「結界ごと」

「ソラは、どれ作った?」 「それそれ、野菜のサラダ。あとそっちのお肉も焼いた、あと、スープ……」  膝の上のミウに、もぐもぐごはんを食べさせながら、ルカの質問に答える。 「ん」  ふ、と笑いながらルカが食べ始める。 「ん、うまい」 「ほんと? ありがと」  食べて笑ってくれると、やっぱり嬉しい。 「イチャついてねーで、オレのも食え」  アランが呆れたように笑いながら言うと、ルカが「言われなくても食うから」と返してて、周りの皆が笑ってる。  ……イチャついては、ないけどね。  つか、恥ずかしい事わないでよ。アランはいっつもそうなんだから。  オレは反応はせずに、ミウにモグモグ食べさせつつ。  作ったサラダを食べてみた。 「あ、美味しいじゃん」  思わずそう言うと、ルカが隣でクッと笑う。 「マズイと思って作ってたのか?」 「そうじゃないけど」  謎の葉っぱだったから。さっき何もつけないで食べたら苦かったし。 「苦いのが意外となくなってたから」 「ああ、それさっき、しばらく塩水に付けたろ?」  アランがオレにそう言いながら、サラダを口にする。 「うまいじゃん」 「うんうん」  えへへ。  アランに言われて喜んで、ふと気づくと膝のミウも同じように笑ってる。 「ミウとソラってさ」  正面に座ってたリアが、じーっとこちらを眺めながら笑う。 「兄弟みたいね」  ……兄弟……?  ちょっと複雑な顔をしてると、皆が周りで可笑しそうに笑う。 「どっちが上だろうな?」 「オレ――――……? じゃないのかな? ミウ長生きなんだっけ?」  ルカの言葉に即答しようとしたけど、途中で勢いを失ったまま、ミウと見つめあっていると。 「みゃ」  めちゃくちゃニコニコ笑われて。   なんかもうどうでもよくなって、ナデナデしまくってしまう。 「可愛いよ~」  むぎゅ、と抱き締めてると、ルカがちょっとこっちをちら見して。 「……寝る時は、ミウはリアんとこな」  その発言に、オレも含めて皆は、は?と一気に固まって。  あーはいはい、と誰もはっきり言わず、ただ、おかしそうに笑っている。    何なんだ。もう。 恥ずかしいな!!  今言わなくたって、良いじゃん、大体皆、そうなるだろうってバレてるし!  もう!!  思った瞬間、だった。  ガタン!と船が揺れて、スープが零れた。 「わ……っ」  そのままがたがた揺れて。  ふっと気づいた時には、ミウごと、ルカの腕の中に居た。 「ルカ……」 「ちゃんと捕まってろよ。行ってくるから。アラン、こいつ頼む」 「了解」    ルカの手から、アランの手に、渡される。  いつも、アランに、触んなって言うのに。   「ソラ、捕まってな。揺れるかも」 「……オレは、ここに居た方が、いい?」 「うん。多分。オレら居ても、戦えないから」  魔物の声と。  ルカ達の声と。  上からずっと聞こえてる。  オレは、ミウを抱き締めて、とりあえず転がらないように、踏ん張る。  アランは側に居てくれるけど。  魔物が見えても怖いけど、何も見えないって、心配で、ドキドキする。 「これって、その、探してる奴なの?」 「あーどうだろ。――――……ちょっと待ってて。大丈夫? ソラ」 「うん、大丈夫」  アランが離れて、階段を上って行く。  そろそろ上に着くかなという辺りで、すごい、叫び声がした。  あ。倒した、のかな。  ひー、怖いー……。声だけで怖すぎるー。  ……ていうか、オレ、さっき、こんなんで寝てたの?  相当ヤバいな……。  ドキドキしながら、ミウを抱き締めたまま、階段を上っていくと。  もう静か。オレが顔を出すと、皆がオレを振り返った。 「ソラ。大丈夫か?」  ルカがオレを見て、そう言う。 「……おかしくない? それ、オレのセリフ……」 「お前、転がってどっかぶつけてそうだから」  ははっと笑って、ルカがオレの隣に来る。 「ぶつけてねえ?」 「ぶつけてません……」 「ん」  クスクス笑って、ルカがオレを見下ろす。 「……倒したの?」 「倒した――――……っつか。なあ、あれ、さっきも倒したよな?」  ルカが言うと、皆が頷く。 「……まさかと思うけど、波を出してる魔物って、あれがものすごい数居るとかじゃねえよな?」 「――――……」  皆、嫌そうに口を閉ざしている。 「強いの??」 「――――……なんつーか……結界張ってて剣がきかねえし、魔法もなかなかきかねえし……」 「どうやって倒したの?」 「……こないだやったろ、お前を掴んで飛んだ魔物。結界ごとぶったぎったやつ」 「あ。うん」 「――――……あれやるしかねえな。それか、魔法で少しずつ……か」 「結界ごとっていうのは、あんまり出来ないの?」 「……そんな多用できねーな。すげえ使うから。力」 「そう、なんだ……」  よく分からないオレでも、なんだか、うーん、と考えてしまう。  皆も、なんかちょっと困った顔をしている。  そっか、結界ごとっていうのは、ルカしかできないんだろうなぁ……。  それは大変かも……。 「まあ、考えてもしょうがねえから、戻って飯くおうぜ」  何だか重い空気の中。ルカがケロッとしてそういうから、皆は、ふー、と息を吐きながら、頷いた。  わー、そうだ、ご飯、なんか色々零れちゃってたかも。  大丈夫かな。  ルカ達の倒さなきゃいけない魔物も心配だったけど。  とりあえずの心配は、ご飯たち。  一足先に階段を下りて、キッチンに戻った。

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