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「戦う能力」

    何とか無事なご飯たちを食べることになった。  スープは、鍋のが残ってたから温めて入れ直す。 「床は後でまとめて流すからほっといていいよ」  アランの言葉に頷いて、皆で食事の続き。  ミウはもうお腹いっぱいみたいで、オレの膝からふわっと飛んで、空中をふわふわ浮き始めた。部屋の中を飛びながら、色々見てまわってる感じ。可愛い。 「さっきの魔物が大量に居るっていうのはわかんねえけどさ」  アランが考えながら、話し始める。 「波を起こしてる大元は居ると思うよ。ああいうのがたくさんいて、皆でやってるなら、もっと波がバラバラにおこるんじゃねえかな。休憩時間みたいなのも、たくさん居たらそんな無いだろうし……まあ通常の波とは違うからそう思うってだけだけど――――……でかいのが居る、とは思うんだけどな」 「でかいのが居るとして、でもさっきみたいなのがたくさん居ると、厄介だよな。正直、オレ、することねえけど」  ゴウが苦笑い。 「剣だけだと効かねえし。魔法を使えるリアとキースはいいけど」 「でもあたしたちの魔法じゃ倒せないもんね。ずっと魔法で攻撃して、結界がはれなくなる位弱らせるとか……ちょっと無理だよね」 「無理だね。向こうがが弱る前に、こっちの魔力が切れる気がする」  ゴウもリアもキースも、珍しく、困り顔。  ルカは皆が話してる間は、食べながら黙ってたけど。 「――――……まあ最悪、吹き飛ばすか」  ん? 吹き飛ばす? 「倒せなくても、とりあえずあの中途半端なサイズの奴は、遠くに吹き飛ばす。風の魔法ものせて、沖の方に。斬れなくてもそれなら出来るだろ」 「……ああ、なるほど」 「リアの魔法は、もっと魔法か効く相手までは使わない方がいいし」 「……確かにあんまり意味ないもんね」 「……オレもでかいのは居る気がする。それ倒せば、あいつら、弱るんじゃねえかな。……居たよな、そういう魔物、今までも」 「居たね。そいつが生んでる可能性もあるよね」  キースも、頷きながらそう言う。 「だからさっきみたいなのが現れたら、なるべく力使わず、跳ね返してく作戦で。――――……多分居る、でかいの倒さねえと」  ルカの言葉に、皆、そうだね、と頷いてる。  そっか。  色々大変。分かんないことも多いし。  ……魔法とか、攻撃が効かないとか。大変だなあ。    あー、でも、ゲームの世界もそんなこといっぱいあったっけ。  ――――……ゲームの世界……。うーん……。やっぱりゲームの世界?  でもオレ料理してるし。食べてるし。普通に生きてるし。  ……うーんうーん……わからない……。  食べながら、ぼーと考えていると。  くしゃ、と髪を撫でられる。 「何難しい顔してんの、ソラ」 「んー……なんか大変だなーと思って」 「ふーん?」  クスクス笑いながら、くしゃくしゃされる。 「……オレも戦えたらいいんだけど。なんか無いのかな、戦う能力」  うーん、と考えながらそう言ったら。  何だかシーンと静かになって。  ん?と皆を見渡すと、なんだかとってもニヤニヤされている。 「気持ちだけもらっとくか?」  ルカが笑いながら、皆に言うと、皆はクスクス笑って頷く。  気持ちだけ貰われた……。  まあ確かに、何も出来ないんだけどさ。でもさ。  ちょっと不満でムッとしてると、ルカの片手が顎にかかり、ぶに、とつぶされる。 「もー、何だよー!」 「お前はお前が出来ることしてればいいし――――……オレらと居てくれればいいって、言ってんだろ」 「――――……」  ルカの言葉と、優しい視線に何も返せず。  少しして、うん、と頷く。  皆がクスクス笑ってるし。  ルカにはまた、ヨシヨシされる。

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