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「心配して?」
ルカが何かに気付いたように、アランを見た。
「ああ、まだ言ってなかった。アラン」
「ん?」
話が始まりそうなので、オレはルカから少し離れて、またご飯の続きを食べ始める。
「ソラさ。まだいまいちよく分かんねえけど、どっか違う世界から来たんだ」
「――――……違う、世界? ……違う国、じゃなくて?」
「多分、ここじゃない世界。空から急に落ちてきた」
「――――……」
アランは、首を傾げながら、オレに視線を向けてくる。
「……ソラはどこに居たんだ?」
「……東京ってとこ」
「知らないなぁ……」
「うん。知らないと思う……」
オレが言うと、アランは、しばらくオレの顔と、皆の顔を見比べていたけれど。
「ん……そうなんだ。……ふうん……分かった。あ、他の奴には言わない方がいいんだよな?」
「ああ。今度ジェイには話しとく」
アランの言葉にルカが頷く。
「了解」
それだけ言って、ふーん、そうなんだ、と言いながら、食事を続けてる。
「……もっと何か、ないの?」
思わず聞くと。
「何かって……だってルカがよくわかんねえとか言ってるってことは、わかんねえんだろ? まあ、ソラはここに居るし。よくわかんねえけど、それでいいんじゃねえの」
「――――……」
なんてアバウトで、なんて……すばらしいんだろう。
ここの人達って。
瞬きを繰り返してしまうオレの顔を見て、リアが、あは、と笑い出す。
「そうだよね。ソラは確かにここに居るし。……戦うとか言っちゃって可愛いし」
クスクス笑いながら言うリアに、なんだか皆も笑ってる。
……可愛いとかじゃないんだけど。
大変そうなのに、何もできないから言ったのだけど。
日本に居た時さらっと見かけた、物語の転生物なら、何かの能力貰ってたりするんじゃないのかな。もう、こんなRPGの世界にオレを入れるのに、どうして何も能力付けてくれないのかなあ。ほんとに。
心の中で、むむ、と考えていると。
アランがルカを見つめた。
「とりあえず、夜なんだけどさ。あまり進まないようにしようと思うんだけどいいか?」
「進まない?」
「ほら、進んでるとさ、夜中にも色々会う確率が高まるだろ? 向こうが動いてくるのはしょうがねえけど、こっちは動かない方がいいんじゃねえかなと思って」
アランの言葉に、ルカ達はそれぞれ少し考えて。
「いいよな、それで」
今度はルカの言葉に、皆が頷く。
「寝てる間の結界は少し強くしとく。さっきのにどれだけ効くのかわかんねえけど……ぶつかられるいきなりの衝撃が少しは弱まるといいんだけどな」
「まあ……しょうがないよね。良いんじゃない? 嫌でも目が覚めて」
キースがそう言って笑うと。
ルカがちらっとこっちを見て。
「すげースヤスヤ寝てた奴も居たけどな」
クスクス笑われる。
はいはい、確かに、寝てました。
二匹目の衝撃とうるささに、よく一匹目、目覚めなかったなーと、自分でも、やばいなと思いました。
そう思いながらも、ぶーと膨らんでいると、ルカが横で楽しそうに笑ってる。
なんつーか、ちょっとディスって、面白そうに笑うとこ、あるし。
ルカって……。
「よく言うー、倒した後、ソラが転がってないか慌てて見にいってたくせに」
「なぁ? 結局ただぐーぐー寝てたって戻ってきた時も、これで寝てるとか信じらんねえとか言いながら、すげえ可愛いと思ってそうだったし」
リアとゴウが言うと、ルカは嫌そうに二人を見て、「そんなこと言ってねえだろ」と言うけれど。
「言ってなくたって、分かるよ」
キースが笑いながら、とどめみたいに言う。
――――……あ、心配して、見に来てくれてたんだ。
……そういうの、自分で言えばいいのに。
……まあ、言わないか。ルカだもんな……。
「……お前何笑ってんだ」
「え。……いや、別に……?」
すっとぼけて、そっぽを向くと。
皆がクスクス笑う。
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