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「感動する位」

 食事が終わると、皆で手分けして片づけた。  食器を洗う、テーブルの上や下に零れたものの掃除、アランとオレは途中から、明日の朝の仕込みをしてた。  皆で協力して終わりかけた頃、アランが、なんかお茶飲むか?と言うと、皆がそれぞれ頷いてる。 「じゃあ甲板で待ってて。ちょっと甘いもんも持ってく。ソラ、手伝って」 「うん」  オレとアランが一緒にキッチンの方に立ち始めると、皆が階段を上っていく。 「ミウも行ってていいよ?」  オレの周りにふよふよしてるミウに言うと、一番後ろから階段に登っていたルカの頭上に、ぴゅーんと飛んでいく。 「お前またオレんとこ、きたの?」  ルカが苦笑いでミウに言って、皆に笑われながら消えて行った。 「ミウって、ルカをお前のだと思ってんのかな?」 「ん? どういう意味?」 「だって最初はソラに懐いてたんだろ?」 「うん」 「ルカはソラのだって思ってるから、ルカにも懐き始めたとか?」 「うーん……? どうだろ……確かにオレと居ると、ルカがすぐ近くに居るから、自然とルカとミウも一緒に居る時間が長いけど……」 「オレ、ミウって、なかなか懐かないって聞いてたんだけど」 「んー……でも、結構、オレの周りに居る人には、とっても可愛がられてるよ?」 「でもそれは、ソラに懐いて、下に居るからだろ? 普通、上空をふわふわ浮いてる生き物だと思ってるけど」  お湯を沸かして、カップを並べながら、ちょっと笑ってしまう。 「確かに初めて見た時は、すっごい上をふわふわ飛んでた気がする」  ……あれなんだろって、思ったっけ……。 「あ、でも、ルカ、たまにミウに食べさせてあげてたりさ。あと、なんかミウに、オレが危険な時は、ルカを呼んでとか頼んでてさ。仲良しなんだよ、不思議だけど」 「へえ? できんの、そんなこと」 「うん。一回、オレが危なかった時に、多分ミウの力でさ、ルカがオレの目の前に、突然現れたんだよ」 「――――……あ。それオレ、知ってるやつかな」 「ん?」 「話してたのに、ルカが突然、フッと消えた時だろ。なんかしばらくしてから戻ってきて、ちょっとミウに呼ばれてたとか、ルカ言ってた」 「あ、そう。それそれ」  そういえばアランと話してたって、ルカも言ってたっけ。 「……ミウって結界も張るし、ルカの結界もなんてことないように抜けてくし。しかも、ルカを移動させるとか。……すげぇな。あの顔で」 「顔って……まあ…… 可愛すぎだけど」  二人でクスクス笑ってしまう。 「たしかにあの顔でって思っちゃうよね」 「……まあ、色んな魔力とかは、顔は関係ないってことだよなぁ。あ、ソラ、このお菓子、皿に出すから小さい皿持って行って」 「うん」  小さいお皿を数枚持って、アランからちっちゃい、可愛い飴玉みたいなお菓子を受け取る。 「いっこ食べてもいい?」 「いいよ」  ぱく、と食べると。金平糖みたいな、味。 「わーおいしい、これ。甘い」 「だろ。上行こうぜ」 「うん」  二人でお茶とお菓子を持って、甲板に上がる。  上がった瞬間。  まっ暗で、びっくり。  夕飯を食べてる間に、すっかり、陽が落ちて、周囲は真っ暗。  月明かりに気付いて空を見ると。  見たこともないくらい、たくさんの星。 「――――……」  しばらく、呆然。  綺麗すぎる。 「ソラ、どした?」  アランがオレを振り返る。  瞬間、ちょっと船が揺れて。上を見てたオレは、ちょっとよろけて。 「――――……」  転ばない。のは。ルカに支えられたから。 「あほみたいに上見てるから、絶対そうなると思った」  くっくっ、と笑いながら、ルカが、オレの肩をつかんで抱き寄せる。 「期待を裏切らねえよな?」 「期待って言うの、それ……?」 「期待だな」  クスクス笑う。 「星、すげえよな」 「うん」 「目立たないように灯りを落としたから、気を付けろよ」  言いながらも、オレを離さず支えたままで、甲板の真ん中に居た皆の所に着くと離された。  オレは、アランと一緒にお茶を皆に配って、お菓子も適当に手の届くところに置いていく。 「ミウは?」  あたりを見回すけど、見えなくて。  ルカが、あっち、と上向く。 「……あっち……?」  目を細めてみると、星空、かなり遠くにちょこんとちっちゃく浮いてるミウが見える。 「すっごい上に居る……」  見上げてると、リアが、「外にきたら即あそこまで飛んでっちゃった」 「そうなんだー。すごいねぇ……高い」  見上げながら。  また星を見て、ぼー。  何となく、皆も静かに空を見上げてる。  海って他に明かりが無いから。  この船の明かりを落とすと。周りの闇に吸い込まれそうな位、暗いけど。  空の月と星は――――……。  なんか、感動する位、綺麗だ。    

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