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「初めて」

 ルカと一緒に座ってからも、ぼー、と空を眺めてしまう。 「ソラ、そんなに綺麗?」  リアが笑いながら聞いてくる。  オレはお茶を両手で持って。隣のルカの腕のあたりに背中で寄っかかったまま、ひたすら空を見つめてしまう。 「うん。こんなすごい星空、初めて見たかも……」 「ソラの世界は、違うの?」 「うん。……明るい世界なんだよね。だから、星は見ずらい。見えるとこはあるけど……住んでたとこは、あんまり見えなかった」 「そうなんだね……」  ……なんだか皆、今はとっても静かで。いつもは会話が途切れないのに、誰も何も話さない。  相変わらず、波しぶきはすごく見えるのに、あんまり船が揺れないのは、ルカの結界のおかげなんだろうか。  ……不思議。  世界にここの皆しか、居ないみたい。  ちょっと、静かすぎて、怖いくらい。  ……ルカに触れてる背中が、暖かいから、なんとなくホッとするけど。  それがなかったら、ちょっと心細くなるくらい。  不意にルカの手がオレの脇から入ってきて。お茶を持ってるからか、いつもよりそーっと、引き寄せられた。  なんかルカの脚の間にはまって、背中にルカの胸。 「――――……」  一瞬はやっぱり。  恥ずかしいなって思ったのだけれど。  まあいっか……どうせ全部知られてる皆しか居ないし。とか思ってしまって、そのまま、体から力を抜いて背中を預ける。  なんか……よくこうやって、よっかかってるなあ、オレ。    いつのまにか、全部信じてて、頼ってる。安心してる。  ……オレも、ルカを心配もしてるし。美味しいもの食べさせて、笑顔になってくれたらいいなとか。  ……初めてかも。ルカが。    ルカは、嘘はつかないって。  なんかオレ、完全に信じてる。  会ってから、ずっと一緒に居て。  ――――……ほかの人とはしないこと、めちゃくちゃして、くっついてるから、なのかな。  ……変なの。  最初、とんでもない感じだったのに。 「ソラ」  リアに呼ばれる。 「うん?」 「ミウを呼んで?」 「うん。 ミウー!」  言われるままにミウを呼ぶと、聞こえたのかどうかわからない遠くに居たミウは、すぐにぴゅーん、と降りてくる。  ぽふん、とオレの腕の中に入り込んだのだけれど。 「ミウ、あたしと部屋に行こう?」  リアがそう言うと、ミウはふわっと浮いて、リアのそばに飛んでいく。  リアが立ち上がると、ほかの皆もそろって立ち上がる。 「ソラ、明日起こすから、なるべく早く寝ろよ~?」 「うん」  アランがオレに向けてそう言うと、横からゴウがルカを見る。 「ルカもだぞ。体力も魔力もお前が一番使うんだからな」  ルカが頷くと、皆笑いながら、じゃあなーおやすみーと、口々に言いながら、下に消えていった。 「……置いてかれちゃったね」  そう言うと、ルカがクスクス笑う。 「オレ達をふたりきりにしてったんだろ」 「……そうなの?」 「そうだろ」  言いながら、ルカがオレを更に抱き寄せて、完全にすっぽり抱き込まれる。 「……こんな風にされんの、初めて」 「……ふうん?」 「まあ……オレ女の子としか付き合ったことないから、される訳がないんだけどさ……」 「――――……」 「……こんなに安心、するんだなぁ、って……すっげー不思議」  星をひたすら見つめたまま、ぽつぽつ話していると。  ルカが、後ろで、小さく笑う。 「オレも」 「ん?」 「抱くわけじゃねえのに、こんなにこうしてたいって思うのは、初めてだな」 「――――……」  …………抱くわけじゃないのにって。  くっついてた時は、抱いてたってことですよね。  ……まあ、そうでしょうね、そりゃあ、ルカはモテるだろうし、めちゃくちゃそういうこと大好きだから、即そうなってたんだろうし。 「……あ、オレ、今、余計な事言った?」 「……オレの珍しくちょっと、浸ってた気分をぶち壊すくらいは、余計な事言ったけど」  ムー、と膨らみながらそう言うと。  後ろで、ルカが苦笑してる。顎に伸びてきた手に、後ろを向かされて。 「お前にしか、こんな風にしてないってことだけどな」  そんなこと言いながら。  なんだかめちゃくちゃ優しく緩む瞳に見つめられたまま。  唇、重ねられる。  ズルいんだよー。  そんな風に見られると、ムカついてても……拒否れないんだよ。  もー、ズルズルズルズルズルい…………。

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