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「ルカの筋肉」

 三日目の夜。  午後になってからなんだかやたらあの魔物が出てきた。  増えてる。てことは。  親みたいなでっかいのに、近づいてる?  皆がそんなことを言い始めた。  確かに、波が少し、荒くなったような気も、する。  ――――……大きい何かに、近づいてるのか……。  ……怖いなあ。もう、正直、早く地上に戻りたい。  ルカ達に何もなく、ささっと倒せて、地面のある所に戻れますように……。  今日はシャワーを浴びながら、そんなことを祈る。  浴び終えて体を拭いてから、手に取ったズボンをマジマジ見てしまう。  船に乗る日に買った、ショートパンツみたいなズボン。  ……皆の前では、はくなって言われたやつ……。  実際はいてみると、確かに膝よりだいぶ上ではあるけど……お尻が見えるわけでもいし。やっぱり、全然問題ないけど。……ていうか、ここに居るルカ以外の人が、オレのこれに、そういう意味で反応する訳ない。ルカもそれは分かってると思うんだけどなぁ。  シャワールームから部屋に出ると、ベッドの端に腰かけていたルカがこっちを見た。 「……似合う?」 「似合う。こっち来な、ソラ」  手を差し伸べられて、ルカに近づくと、そのまま手を取られて、ベッドに背を沈められた。オレがアランと明日の仕込みをしている間に、ルカもシャワーを浴びていたから、近づくと、ふわりと石鹼の香りがする。 「……せっかくはいたのに、もう脱がせるの?」  見上げて言うと、ルカが、ふ、と笑った。 「まあ……脱がせるけど?」 「……裸で出てきても変わんないんじゃ……」 「……別にいいけど、裸で出てきても」  めちゃくちゃ可笑しそうにクスクス笑われて、むむ、とよく考えると、オレがバカすぎて、げんなり。 「……間違った。服着て出てくる」  そう言ったら、ルカは、オレの頬にでっかい手で触れる。 「裸でいいぞ?」 「……やだ」 「オレが喜ぶだけだな……」 「……喜ぶの?」 「……明日、試してみれば?」 「いい。絶対やだ」  言うとルカは、ますます可笑しそうに笑う。  少し視線を落とした先に、オレの上に居るルカの体が目に入る。  ルカは特に戦いに行く時は、攻撃をガードするようなものが、色々ついてるし、刀もぶら下げてるからそのホルダーとかもあるし、アクセサリーとかも色々ごちゃごちゃついていて、触れても、あんまり肌って感じがしない。  宴とか言う時は、そういうガードするものはほとんど外してて刀だけとか、そんな感じだけど、マントとかもついてるし、薄い生地じゃない、何かしらやっぱりガード機能がついてる服を着ている気がするから、やっぱり、直接、肌って触感ではない。  オレの着てるのは、上からすっぽりかぶって、ウエストを飾り紐みたいなのでしばるだけだから、すごく薄手で、そのまま触ったら肌、みたいな感じの服だけど。  夜、ベッドの上でだけ、ルカは、オレと同じような薄手の服になることが多い。そうすると……。 「――――……ちょっといい?」 「ん?」  なんとなく、ルカの服の上から、ルカの胸に触れる。  肌の感触、というか。筋肉が手に触れる。  すごく硬い様な、柔らかくてしなやかなような。でもって、なんだか、熱い。 「……何?」  ルカは、面白そうな顔をして、ルカの胸にスリスリ触れているオレを、上から見下ろす。  ランプだけになってる、オレンジ色の空間は、なんだか、雰囲気がありすぎて。嫌でも、ドキドキする。 「ルカの筋肉ってさあ……」 「ん」 「……カッコいいなあって思う」 「――――……」 「強そうだし。……オレもそういう感じがいいなあ」  ぷにぷに押したりしてみると、弾力みたいなのがすごい気がする。  いーなー。これ。  強そうでカッコいいし、触り心地も良いし。

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