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「感極まって」

     結界が、破れない。  外は硬くて、斬れない。外は。  ――――……そうだ。  とっさに浮かんだ考えに。  もうそれしかないと、思った瞬間。  リアの近くに落ちてるルカの剣と、さっきの下からの階段の辺りに居るミウに視線を向ける。  立ち上がって走り出すと、キースとゴウが、「ソラ?!」と声を上げた。  リアのびっくりした顔を見ながら、ルカの剣を拾い上げる。 「ソラ!」  動いたオレ目掛けて、飛んできた魔物の足を、リアが魔法で跳ね返してくれた。 「オレ、ちょっと、行ってくる」 「行ってくるって、どこに?」 「ミウ、おいで!」  呼ぶと、すぐ近くに飛んでくる、ミウ。 「ミウ、オレを、ルカのとこ」  言いかけた時、リアの手に口をふさがれた。 「え、待って!? ……待って、ソラ、ルカのとこって……あれの中よ?」 「だって」 「ソラ……!」  キースとゴウと、アランも、駆け寄ってくる。 「ソラ、何を」 「ルカのところに、行ってくる!」 「ルカのところって、今は、行けないだろ?」 「だって、助けないと……!」 「だからってソラが行ったって……!」 「剣を、持ってく! 中からなら、斬れるかも……!」  皆が、一瞬何も言わなくなった。  そうかも、と思ったんだと思う。 「――――……ルカ、生きてるんだよね?!」  そう聞くと、キースは、オレを見つめ返して。   何度か、頷いた。 「……じゃあ、行く!」 「っ危険だし……行くって言ってもどうやって」  キースがそう言うと。 「さっき、ソラがミウって……」  リアが言いながら、ミウとオレを見比べる。   「行くって……ミウと?」  皆がミウを見て、眉を顰める。  アランだけが、ミウのそのことを知ってるから、オレをじっと見てる。 「多分、ミウ、それが出来るから」  ミウを見上げて、オレは、ルカの剣を握った。  攻撃をしてきた足や、小さな奴を弾き飛ばしながら、ゴウとキースが振り返る。 「ほんとに、ヤバくなったら、先に戻っててね」  皆を見て言うと、皆、こんな時だけど苦笑い。 「オレは、ルカのとこにいるから、大丈夫だから」  そう言ってから、ミウを見上げた。 「ミウ、オレをルカのとこに、運んで!!」  そう言ったオレを、ミウがじっと見つめた。  すると、ふっと、なんとも言えない感覚がして、浮いた気がした。  思わず、目をぎゅ、とつむった次の、瞬間。 「……ソラ…!?」  そんな声が、聞こえて。  空中から落下した感覚のあるオレを、抱きとめてくれたのは。  顔を見て、ルカだと確信した瞬間。 「……ッ……ルカ……!! 良かった、生きてた……!」    ほんとは噛まれたんじゃないかとか、中で、溶けてるんじゃないかとか、もう、色々心配で。  見る限り、どこも溶けてないし、怪我をしてもいない。 「良かった……!!」  剣がルカに当たらないようにしながら、ぎゅ、としがみついてしまう。 「っ……ソラ、何で――――……ああ……」  ルカは、ぷよぷよ浮かんでるミウを見て、は、と息をついた。 「お前か……」 「連れてきてもらった……!」  そう言うと、即、思い切り、バカ、と言われた。 「危ないだろ、こっちがどんなとこかも、わかんねえのに……」 「……っ……だから来たんじゃん……!」  もうなんか、感極まって、涙が浮かんでくる。そのまま睨んでると。  ルカが、ぐっと言葉に詰まって。  ふいに。一瞬だけ、キス、された。 「――――……剣持ってきてくれたんだな」  すぐに唇を離してそう言って、オレの手から、刀を受け取る。 「ここ、多分、胃の中かなんか……とにかく臓器の中だろうが」 「――――……」  ルカのすぐ近くで、ミウを抱きながら、周りを見る。  下、多分、胃液とかそういうのなのか。  なんだか気持ち悪い液が、靴についてて、とっても不快。 「風の魔法で、傷をつけることが可能なんだよ」 「――――……」  ルカが指さしたところが、切れているのが、分かる。 「じゃあ、結界とかは……」 「まあ、体の中に結界なんて無いとは思ってたから、どうにか、入れないかとは、思ってたんだが……」 「え。わざと、食べられたの?」  そうなの??? 「……いや。わざとなら剣置いていかねえだろ」  クックッと笑いながら、ルカがオレを見る。 「あれはほんと不注意」 「……オレのせいだけどね……」  そういったオレに、ルカは、ふっと笑って。 「ちょうど、剣だったら、中から真っ二つなのにって、思ってたんだ」 「――――……」  ルカが、オレを見て、ニヤと、笑う。 「助かった、かもな」     硬い殻みたいなのに覆われた、結界つきの外じゃなくて。  ――――……中からなら。  ルカなら。  その不適な笑みに。  なんだかワクワクしてしまう。  

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