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「おかえり」

「ソラ、先に戻ってろ」 「え」 「斬ったら、どうなるか分からないし、危ねえから」 「――――……」  一緒に居たい、と思ったけど。  ……何かあった時、オレを守りながら、ルカが怪我したりしたら、困るとも、思った。 「ルカ、一人の方が……自分を守れるんだよね?」 「――――……そうだな」  ルカが、ふ、と笑う。 「何があっても、絶対戻るから、大丈夫だ。待ってろよ」  ルカのまっすぐで、強い瞳。  素直に、それを信じられて。オレは、頷いた。 「すぐ、来てね」 「ああ」  ルカの手が、オレの頭を、くしゃくしゃ撫でる。  一瞬。泣きそうに、なるけど。なんとか、堪えた。 「ミウ」  ルカが、ミウを見上げて、まっすぐ見つめた。 「ソラを連れて、皆の所に戻れ」  ミウは、じっとルカを見つめて。  それから、みゃ、と言って。瞬間、また、さっきの不思議な感覚。  次の瞬間にはもう、オレは、甲板の上で。 「……っとと……」  何とか、転がらないで、着地。  皆が、突然降ってきたオレに、「ソラ!」と呼びかける。 「今、ルカが――――……」  言った瞬間だった。  急に、パアッとあたりがすごく光って。  それが、デカい魔物の、中からだってことが、分かった時にはもう、ものすごい風と共に、叫び声みたいなのと、音がして。  オレは風に飛ばされて、転がりそうになった時、急に、ふわりと浮いた。  ミウが飛んできて、オレの腕に収まる。ミウの結界の中に入れられたみたいで。何の衝撃も、風も、受けない。  うわ、すご……。  抱き締めてるミウを見つめてしまう。 「これ、ルカか?」  風を避けて、皆がそれぞれ、ちゃんと隠れてて。そこから、ゴウが叫ぶ。 「派手だよね」 「ルカらしいけど」  キースと、横にいるアランも、笑いながらそう言って。 「きゃー、何この風!」  リアの声が聞こえた次の瞬間には、リアも、オレと一緒に、ミウの結界に入ってきて、ほっと一息。  その時だった。  ますます眩しい光が起こって、目が開けていられなくて、ぎゅ、とつむって。  何秒か。  ――――……ふ、と静かになった。 「――――……っ」  恐る恐る、目を開けると。  嵐みたいだった空が、瞬間的に、晴れていって。  今度の眩しさは、空の、太陽のもので。 「――――……」  太陽の光、逆光になってて、影しか見えなかったけど。  空中から、すとん、と甲板に、降り立ったのは。 「――――……ルカ……!」  ミウを抱っこしたまま、ルカの元に、五メートル位、ダッシュしたら。  最後、こけそうになって。 「うわ、何……」  とっさに支えてくれたルカの腕の中に、ミウと突っ込んで。  三人で。いや、二人と一匹で、ずでん、と転がった。  ……まあ、しりもちついたのは、ルカだけで。  オレとミウは、ルカの上にのっかった、ので、ダメージはなし。 「いって……」  苦笑いのルカは、自分の上に居るオレとミウを見て。  ふ、と笑った。 「ただいま」 「――――……ッ」  言われた瞬間。  涙が滲んで。 「……おかえり」  言ったら余計に、涙が溢れてきた。 「すぐ戻ったろ? 泣くなよ」  言いながら、ルカが、オレをぎゅ、と抱き締めて。 「ミウ、邪魔……」  オレの抱えてるミウを見て、苦笑い。 「ミウ、大活躍だったから……邪魔じゃないよ」  涙声で笑いながら言うと、ルカも「そうだな」とクスクス笑って、ミウの頭もぐりぐり撫でた。   「小さいのも、デカいのが消えたら、居なくなったんだな」  いつの間にか周りに来てた皆が、あたりを見回していた。 「良かったよな、ちいせぇの、倒して回るのかと、思ってた」  ルカが、笑いながら皆を見上げる。すると、皆も、嬉しそうに笑ってて。 「あー……」  ルカが、そう言いながら、ごろん、と甲板に、倒れた。  オレと、ミウを抱き締めたまま。 「すっ……げぇ、疲れた……」  その言葉を聞いて。  皆もその場に、腰を下ろして――――……そのまま、転がった。 「空、青いねー……」  リアの声。 「船、揺れないな……」  アランものんびりした声で言う。 「ほんと……」 「――――……すげー静か……」  キースとゴウも、そう言って。  なんかオレは。  ルカの心臓の音、聞きながら。  …………なんか、安心したら、眠くなってきちゃったなあ、なんて……思ってた。

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