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「怖かった」
ミウと一緒にルカの上に転がってるのも何か変だなと気づいて、ルカの上からどいて、甲板の上に直接仰向けで転がった。
すごく、静か。
青い空と――――……静かな波の音。
「――――……さっきまでの天気が、嘘みたいだね」
「だな」
ルカの笑み交じりの声。
「眩しくて見れなかったんだけど……さっきのどうやって倒したの?」
「魔法の力、全部乗っけて、斬っただけ」
「何であんなに、光ったの?」
そう聞くと、ルカは、寝転がったまま、オレに視線を向けて、笑う。
「さあ?……力が乗りすぎた? 構えてた時から、剣が光ってた」
「……風の魔法、使った?」
「ああ。……飛ばされそうだった?」
「うん。でも、ミウが助けてくれた」
そう言うと、ルカは、勢いをつけて、体を起こした。
つられて、オレも皆も、起き上がった。
「ソラとミウ――――……今回は、助かった」
ふ、と笑んで、オレとミウを、よしよし、と撫でる。
でももともと、ルカが捕まったのは、オレを庇ったせいだけど……と、ちらりと頭をかすめたけれど。
ルカや皆の笑顔を見てたら、それは言わなくてもいいのかなと思って。
うん、と頷いた。
「よし――――……アラン、元気か?」
「もちろん。元気」
「腹減った! 朝飯!」
「了解」
アランが一番に立ち上がって、次々に皆も立ち上がる。
目の前のルカが立ち上がった状態で、オレを見下ろして。
――――……なんか。
……ムカつく気もするけど。
……やっぱり、カッコいいなあ、ルカ。
オレの目の前で、マントが揺れてるのを、見上げて、そんな風に思ってると。
「ソラ、ほら」
笑顔のルカに、手を差し出された。
ミウを腕に抱っこしたまま、片手でそれを掴んで、オレも普通に立ち上がろうと、したんだけど――――……。
普通に立ち上がったと思った脚から、力がかくん、と抜けて。
崩れそうになったところを、ルカに抱き留められた。
「ソラ? どした?」
間近で、じっと見下ろされる。
「――――……あの……」
なんか。足、おかしい。
「――――……足が……」
「……立てねえの?」
「……なんか、すっごく……怖かった、なあと思ったら……」
今更ながら、オレ、あんなでかい、良く分かんないものに狙われたり。
あんなもののお腹の中に、飛び込むような真似をしたり。
……正直、最後の、ルカの攻撃の衝撃と、あの魔物の叫びとかだけだって。
死ぬほど、怖かったなあ、なんて思ったら。
手が冷たくなって、今更の冷や汗。
「うわー何これ……」
皆が集まってきて、オレの状態を把握して、笑い出す。
「さっきは、カッコよかったのになあソラ?」
ゴウが大笑いしてる。
「やばかったら置いてっていいよなんて言ってたよね」
「ルカのとこに居るから大丈夫、とかも言ってた」
キースもリアも、クスクス笑うし。
「大丈夫、ソラ、飯はオレが作ってやるから。座ってろ座ってろ」
アランが楽しそうに笑ってそんな風に言う。
「――――……ソラ、お前、そんなこと言ったのか?」
皆の言ってることを聞いたルカに、まじまじと見下ろされる。
「ルカが言ってたからだよ。……だって、ルカとオレが中から出れなくて、皆も外でやられちゃったら、困るし……」
そう言うと、なんだか皆は、クスクス笑って。
オレの頭を順番に、ぽんぽんぽんぽん、と撫でてから、下に降りて行った。
「ミウおいでー」
リアの声がすると、ミウはオレの腕の中から抜け出して飛んで行って、皆と一緒に下に消えていった。
あれれ。皆居なくなっちゃったな。
皆が居なくなった階段の方を見ていると。
支えてくれてた腕が、より強く回って、オレを引き寄せた。
「?」
別に嫌じゃないけど、ん? とルカを見上げると。
ルカは、オレをまっすぐ見つめていた。
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