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「すごいのは」

 皆の所に戻ると、待ってましたーとばかりに、お酒をグラスに注ぎだす。  アランが先におつまみぽいものを作ってたみたいで、それも出てきたから大喜び。  朝なんですけどねー、まだ。  ほんと、自由でいいなあ。楽しそうだ。  クスクス笑いながら皆を見てたら、アランに手招きされた。 「ソラ、手伝って」 「うん」  アランの隣に並んで立ちながら、すでに飲み始めた皆を振り返る。 「ここの人達って、いっつもこんな感じなの?」 「こんなって?」 「んー……飲むの大好き? 飲み会……宴? 大好きって感じ?」 「まあそうだな。……ソラんとこは違うのか?」  んー……。違うってわけじゃ無いんだけど。 「飲むのが好きな人はいっぱい居ると思うけど、朝からワイワイ飲んでるとかはあんまりないかなあ……?」  お正月とか、そんな時、位なイメージだな。 「ルカ達が特別なのか、皆もそうなのかなーって」 「まあ……皆もそうかな?」 「あ、そうなんだ」  そっかそっか、まあそんな気はしてた。  クスクス笑ってると、アランが、これ焼いといてとお肉を渡してくる。  フライパンでジュージュー焼きながら、良い匂い~とホクホクしていると、アランが、また笑う。 「ん?」 「ソラってさ、どっかから、来たんだろ?」 「うん」 「突然、全然違うところに来たんだろ?」 「うん」 「そんな顔してるけど、強いよな」 「……そんな顔って……」  苦笑しながら、アランを見つめると、またクスクス笑って、だってさ、と続ける。 「今まで生きてたとこじゃないとこに、意味も分からないで来ててさ、戦ったこともないような魔物とかも居るとこで笑ってられるのは、すごいと思うんだよね」  そう言いながら、「これ適当にかけて」と、塩を渡される。  お肉に塩を振りかけながら、まあ確かに、と少し考える。 「……でもそれはオレがすごいんじゃないと思う」 「ん?」 「この世界に来た瞬間から、ルカ達が居たんだよね」  落ちた時のことを思い出すと、なんだか笑ってしまう。 「ルカ達が魔王と戦ってる真っただ中に落ちてさ。それからずっと、一緒に居てくれてたから……ルカ達が居なかったら、無事にあそこを出られたかもちょっと分かんない……ていうか、無理だったかも……」 「……何でそもそもそんなとこに落ちてきたの?」 「分かんないよー」 「そん時、ソラは自分のとこで何をしてたんだ?」 「何って……」  ……ルカ達が出てる、ゲーム……。  魔王と最後の戦いしてて。あと少しで、倒せるところだった。 「あ、肉もういいよ、その皿に置いてくれる?」 「うん」  お肉を並べながら、うーん、と考える。  何してたって……。  ルカ達のゲームをしてた時に、白い光に包まれて、そのゲームとおんなじような画面のルカ達の世界に。  ……何で来たか??? 分かんない。  やっぱりオレは、ゲームの世界に、入っちゃったってことなのかな。  アランがオレを見て、クスクス笑い出す。 「ごめん、そんな悩むなら考えなくていいよ」 「ん」 「ソラ、今の肉の油でさ、この野菜適当に切って、炒めてみな。うまいから」 「はーい」  アランから野菜を受け取って、包丁で切っていく。  ほうれん草みたいな感じかなあ。おいしそう。  ご機嫌で炒めながら、楽しそうな皆を振り返りつつ。  改めて、自分があの時していたことを思い出してみたりする。

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