233 / 290
「連れ込むって」
「神隠し」ていう言葉ってあったけど。
今、向こうにとったら、オレが、神隠しにあったって言われてる感じなのかな……オレは、行方不明ってことになってるのかなぁ。……それとも。……最初に考えてた通り、これは、長い夢、とか?
うーうー-----ん。
分からない。
でも仕方ない。
よく考えたら、向こうの世界だって、突然生まれ落ちて、その世界で一生を生きてくんだし。こっちの世界も途中から始まって、そこからここで一生を生きていくってことになったって、別に……そんなこともあるのかなっていう……。
命がどこからどこに行って、どう終わって、またどこで始まるのかなんて、オレに分かる訳がない。
……確かなのは。
「ソラ、それうまそう。持って来いよ」
「あ、うん」
偉そうな口調の。
――――……でも、なんか優しく笑いかけてくる、ルカの。
近くに居れる限りは、それを楽しんでればいいんじゃないかと。
「うまい」
「うん」
ふふ、と笑うと。
「まだなんかやることあんのか?」
ルカの言葉に、アランを振り返ると、アランは苦笑。
「今いーよ、お疲れ王子の世話してあげてていーから」
「……ルカ、世話されたいの?」
「世話はいらねーけど、座れよ」
笑いながら言うルカに肩を抱かれて、隣に座らされる。
……まあいっか、と思ってしまうから、もう不思議。
「このお酒、甘くて美味しいよ。ソラ好きそう。飲む?」
リアがそう聞いてくれる。
「うん、ちょっと飲む」
答えると、空いてるグラスに注ぎながら、リアが笑う。
「何でちょっと?」
「酔うと寝ちゃうから」
「寝たっていいよねぇ、疲れたでしょ? ソラ」
はい、と、並々注がれてるお酒に、ちょっとルカを見ると。
飲んでいいよ、と笑う。
「何でルカに聞かなきゃいけないの?」
リアが笑いながらそんなことを聞いてくる。
……寝ちゃうと、出来ないからってルカに言われた。とか。
いやそれよりヤバいのは、
食べて片付けてルカが元気だったら、して
とか、オレが言ったことがヤバい。とても言えないので曖昧に笑って、差し出されたグラスを受け取った。
「ありがと、リア」
「ううん。好きだと思うんだけどなぁ、それ」
言われて、一口飲み込む。
ほんとだ。甘くて爽やかで。すっごく美味しい。
「美味しいね」
「そうでしょ?」
二人で笑い合っていると、そのやり取りを見てたゴウが笑い出す。
「ルカ、どうせ食事が終わったらソラ連れ込もうとしてンだろ?」
ニヤニヤ笑いのとんでもないセリフに、ルカはゴウをちらっと見やる。
「だったら?」
「別に。まあ、分かるから」
「何が?」
「戦った後って、なんか、燃えるよなー? しかも強敵だったし」
ルカはゴウを見てから、チラッとオレに視線を投げて。
変なこと言うなー、と、ルカを見てるオレに、ぷ、と笑うと。
「まあ連れ込むけど」
ぐい、と腕に手が回ってきて、オレをグイと、引き寄せる。
「……っ」
「ま、ソラが起きてられたらだけどなぁ?」
「――――……」
ん?
……その言い方だと、オレが寝てたら、無しなのかな。
なんか。今日は、オレ。今までで一番、ていうか、初めて位の感じで、してもいいなと思ってたのにな。
と、なんだか少しだけ、がっかりしていると。
エスパーなルカは、ん?とオレを覗き込んだ。
「……ソラがしてほしそうだから、やっぱ、連れ込むから、後はよろしく」
「何をよろしくするんだよ」
ルカの言葉に苦笑いの皆。
オレは、今回に限っては、バレた……という感じなので、恥ずかしすぎて、何も言うべき言葉が見つからない。
「まあ後のことは、二人に任せて、とにかく食え~!」
アランが作っていたものをテーブルに並べてくれる。
皆がわー、と、喜んでる。
「ごめんね、アラン、次は手伝うから」
そう言うと、アランはクスクス笑って首を振る。
「ソラ、夕飯は一緒に作ろうなー?」
「え? 昼は?」
「……昼は出てこれたらな~?」
からかうように言われて、意味が分かって、結局赤面。
うう。
こういう話がオープンすぎるのって、どうかなと、これに関しては、ほんとに毎回思う……。
ともだちにシェアしよう!