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「綺麗な海」

 アランも一緒に座って、皆で食べたり飲んだりしばらくしていた時。 「なあもう、飯は良いだろ?」  不意にアランが言った。 「いったんここ片付けてから、飲みたい奴は、甲板で飲も。せっかくいい天気なんだし、ここに居るのもったいなくねえ? 簡単なつまみ出すから」  その言葉に皆すぐ乗って、立ち上がって片付け始める。  オレは膝に乗ってたミウを、椅子の上にぽんと座らせて撫でてから、立ち上がった。  お酒はちょっとしか飲まなかったから、今日のオレは、ばっちり元気。  ……いや違う、別に、あれをするために、準備万端なわけではない。そうじゃない。別に。  頭の中で一人で言い訳。  いやいや……。  とりあえず、片付けよ。  お皿を洗ったり、残った食べ物をまた並べ替えて上に運んだり、皆でわいわい楽しく手分けしてやると、アッという間に終わってしまった。 「残った酒、上に運ぶぞ?」  ルカがそう言って、テーブルからお酒を抱えてる。 「うん。全部持てる?」 「そっちのやつ持って、ソラ」 「うん」  ルカの手からはみ出てる分を持って、一緒に階段を上る。  下に居ると分からなかったけれど、もう日が高くて、めちゃくちゃ眩しい。  太陽、真上だ。  波も静か。  さっきまで戦ってた時の、荒れてた光景が、ほんとに嘘みたいな、綺麗な海。 「うわー。ルカー」 「んー?」 「すっごい、綺麗だね」 「ああ……そうだな。こっちが本来だからな」 「うん」  綺麗だなあ……。  酒瓶を抱えたまま、ぼー、と眺めていると、ルカが笑いながら。 「泳ぐか?」 「え?」 「一緒に海、入ってみるか?」 「え、いいの? 食べられちゃうような生き物居ない?」 「オレが一緒に居るから大丈夫だろ」  え、でも。  片づけたら、とか……言ってたけど……。って、別にオレが、どうしてもしたいって思ってるんじゃないけど……。って、オレのこの心の中での言い訳はさっきから何してんだろうと思うのだけど。 「ルカ、良いの……?」 「何が……って、ああ。いいよ、泳いでからで」  すぐに意味が分かったみたいで、クスクス笑いながらルカが言う。 「え、じゃあオレ、こないだの短いのはいてきていい?」 「……まあ、いいか。海入るし」 「いってきまーす」  抱えてたお酒を、アラン達の側に置いて、オレは階段下の部屋に向かって駆け降りる。  確かにあんな綺麗な海に入れるなんて、そんな機会、無いかも。  シュノーケルとかあればいいのに。まあ無いだろうけど。この世界にあったとしても遊びに来たんじゃないからここには持ってきてないと思うけど。  海の中、ちょっと潜ってみよう。  上から見てても、真っ青で綺麗で透き通ってるから、中も見えるんじゃないかなと思う。 「あれ、ミウ?」  ふわふわと飛んできて、オレを見つけると、オレの腕の中に入ってきた。 「何、オレのこと、探してたの?」  可愛いなあ、もう。  抱き締めて、撫でてから、着替えるからちょっと待ってねと言って、ベッドに座らせる。

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