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「お子様?」

 でも、よくよく考えたら、別にべた惚れされてたなんて気はしないけど。  ……泣き顔が好きとか言ってたような……好きっていうか……泣かせたくなる?  ひえーよく考えたら、めちゃくちゃ最初にドSな発言されてたな。  ルカってば、普通に考えたら、変なこと、平気で言ってたじゃんか。  オレ、よく平気だったなぁ……。  あれだな、ここに来て最初で、オレもきっと、必死だったのかなあ。……そんな気がする。 「ねね、ルカ……べた惚れとかじゃ、無かったよね??」 「ん?」 「最初、違ったよね?」 「……どうかな?」  ルカは、ぷ、と笑いながらオレを見てから、皆に視線を向ける。 「最初はね、まさかルカがそんなんなるとは思ってないから、気に入ったんだなーって思ってただけだったよ」  リアがそう言うと、皆が笑って頷く。 「だけど、そのままここまで、ずーっとソラソラ言って、プロポーズまでしちゃってるって聞くと、もうあれ、最初からそうだったんじゃないのかなって、思うよね?」  それにもまた皆が笑って頷くと。  それを聞いてたルカが、オレに視線を戻して。 「……まあ、オレも大体そんな感じで、思ってるけど?」 「――――……」  そな感じ、ていうのは。  今となってみると、最初から、べた惚れだった、と?    うわー。超恥ずかしい。真顔で、こっち見ないでよ。  オレは膝に乗ってたミウをまたぎゅう、と抱き締めた。 「ソラ、行くか?」 「――――……」  行くかって。下に。  ……抱かれに、行くか?って。  聞くな、馬鹿ルカー!  答えられると思ってるんだろうか。  え、何、行きますって言うの。ここで、こんな真昼間に、楽しく飲んでる皆に、今から、しにいってきますって?  え、無理。 「……行かない」 「――――……」 「もうちょっとここに居たい」  むむ、とむくれながら言ったら。  ルカは、ふーん、と笑って。「まーいーけど」と言って、オレの隣に座った。  ぇ。いいの?  自分で言ったくせにちょっと驚いて、ルカを見ると。 「ルカがそういう風に誘ってて、振られるの初めて見たかも」  そんな風に言ってキースがクスクス笑うと、ゴウも「オレも」と笑う。  そんな二人の言葉に苦笑しながら、ルカは刀を後ろに置いた。   「まあオレもちょっと飲みたいし。アラン、強くてもいいから旨いの、ある?」 「んー? あー……。ほれ」  酒瓶一つ、ルカに渡す。 「ソラは寝るからあんまり飲むなよ」  自分のをグラスに注ぎながら、ルカがそう言ってくる。  ……ルカは寝ないのかな? 強いの飲んで。  …………寝ないか。いつも寝ないもんな。 「ソラ、おつまみ、食べる?」  リアが、お皿を渡してくれたので見てみると何かのお菓子みたい。一口食べてみると、塩味の小さいスナック菓子みたいな味。 「アラン、これどうやって作るの?」 「すごい小さいイモがあってさ。それを薄切りにして、塩味つけただけ」  おー、ポテトチップスだねと、ウキウキしてしまう。 「おいしい、これ。ミウも食べる?」  ほぃ、と口に入れてあげると、おいしそうな顔をする。  はいはい、どうぞ、と持たせてあげると、ちっちゃい手で、もぐもぐ食べてる。  ああ可愛い……。ほんと、可愛い。  むぎゅ、と抱き締めて、顔を上げると。  ルカが、苦笑いでオレを見てて。 「……ほんと、お子様」  そんな風なことを、ぽろっと言って、オレの頬に触れて、すりすりと撫でてくる。  ドキ、と。心臓が弾むのは。もう条件反射みたいな。  

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