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「とっても不満」

 頬に触れた手はすぐに離れていって、ルカはまた皆と話し出した。 「――――……」  ルカは、隣に座ってる時、いっつも、なんかくっついてる。  どっかが触れあってるというか。  何なら、後ろからちょっと抱きかかえられてるみたいな、支えられてるみたいな感じで座らされるというか。  ……今まで、こんな風にされたこと、生きてて一度も無い。  ……あ、もしかしたら、子供の頃、母さんとかには、そうされてたかも。とは思わなくもないけど。  大人になってからは、ない。  そうだ、ちょうど小さい子を、支えて座ってる時とかにするような感じな気もする。  ルカがなんかでっかいから、寄りかかっても全然びくともしないし、なんか。  今も、ルカが膝を立てて、その膝に背中がくっついてるみたいな感じ。  しかもルカは、さっき海に入ったま、裸だし。  ほんとだったら、こんな座り方は、ありえないのになあ……。  甘いお酒をちょっとずつ飲みながら。  ……なんとなく、背中に触れてるルカの体温が、安心する。とか。  なんとなく、ルカと居れば、全部大丈夫なんじゃないかと、思う、とか。  あれれ? 酔ってるかな、オレ。 「ソラが、ルカのとこ行くって言った時は、驚いた」  ゴウが面白そうに言う。  あぁ。……さっきの話か。 「誰も止めなかったのか?」  ルカが、そんな風に聞いてる。 「最初は止めたよ」 「どうやっていくんだっつー話だったしな?」  キースとゴウが苦笑い。 「でもミウにつれてってもらうって言うし……」  リアも、オレとミウを見て、クスクス笑う。 「そういえばアランは知ってたの? あの時、何も言わなかったから」  リアに聞かれて、アランは、ん、と笑う。 「前ルカと話してる時、ルカが突然消えたんだよ。さすがにびっくりしてさ。そしたら戻ってきたルカがさぁ。ミウに、ソラのピンチにオレを呼べって言ってたら、本当に呼ばれたって、笑ってて」 「そういう大事そうなところは、言っといてほしいよね」  キースが苦笑いで、ルカを見る。 「あぁ、悪い。つか、まさかあんなことになって、ソラがそんなことするとか、かけらも思ってなかったし」  ルカは、オレとミウを見て、ふ、と笑う。 「オレがソラがピンチの所に呼ばれる位のことだと思ってたから、そんな急いで説明しとこうとか思ってなかった」  ルカはそんな風に言うと、オレの頭をクシャクシャ撫でてくる。 「ソラが飛んで来た時は、ほんと驚いた」 「……バカって言われたよね。危ないだろって」 「当たり前だろ。あん中がどーなってるかも分かんねえし、オレが中でどうなってるかも分かんねえんだから」  呆れたようにそんな風に言うルカに、リアが、「バカって言われちゃったの? ソラ。可哀想に」と苦笑い。  されを聞いてたキースが、「あ、でも」と話し始める。 「それはさ。ルカは生きてると思うって、オレがソラに言ったからっていうのがあるからね?」 「ん?」  ルカがキースを見て、少し首をかしげる。 「だからさ、ルカがあの時もう食べられて死んでたら、船の結界も外れてる筈だから、まだ今は大丈夫、てソラに言ったんだよ。……まあ、ソラがパニック起こしたら困るから、安心させようと思っただけなんだけど。でもそれを言ったから、ソラはルカのところに行くって決めたんだと思うよ。完全に無謀に言ったんじゃないよ?」 「それにしたって、オレがどうなってるか、分かんないだろ? 辛うじて生きてるだけかもしれないし。なのに、あんなとこに飛んで来るとか。つか、お前らも来させるとか……もしこの先またあったら、もう少し考えろよな?」  ……とか。ルカは言うのだけど。  ……何だかオレはとってもとっても、不満だったりする。

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