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「運ばれる」

「ていうかさ」  ぶー、と膨らんで、オレはルカを睨んだ。 「ルカがどーなってるか分かんないってことくらいちゃんと分かってたし、オレ……」 「ほんとか? じゃあ何で来たんだよ。危ないだろ」 「……っだから、危ないから、行ったんじゃん。ルカが、そのまま危ないとこに居るなんて、そんなの無理だったから行ったんだよ」  もうほんとにムカついてきて、はっきりそう言うと、ルカはちょっと黙った。 「危ないから来るなとかの話じゃないもん。危ないからこそ行ったんだからね。行かなかったら、ルカが死んじゃうのかなとか、中でさ、強烈な胃液とかで溶けちゃってたらどうしようとかさ、もうほんと、心配だったんだからね!!」 「だから、そんな危ないと思うとこに、お前に来てほしくないって、オレは言って……」 「だってあの時、剣もオレが持ってたし、行くしかないって思うじゃん! ミウ、オレのことならきっと、ルカのとこに運んでくれるって思ったし。他の人を運んでくれるかとか、試してる暇なかったし」  ルカは、オレの勢いに引いてるのか、何も言わないけど。  皆も、なんだかちょっと笑いながら、見守ってて、何も言わない。  ……ああもう、なんか、さっきの気持ち思い出してきちゃったじゃん。  ……なんか、泣きそうになってきた。  ルカが、噛まれて怪我してて、生きてるけど死にそうだったら、とか。  胃液とかヤバくて、入ったらすぐ溶けちゃうとかだったら、どうしようとか。  あの時、頭に浮かべないようにしてたけど、遠いとこで、どんな消そうと思っても、よぎってたそれが、ほんとに怖くて。  ルカにもう、触れなくなったら、どうしようって思った時の、気持ち。  うる、と涙が滲んでしまって、唇をちょっと噛んで、少し俯いた瞬間。 「……リア、ミウ頼む」  オレの膝の上からミウを抱えあげて、ほい、とリアに渡したと思ったら。  ルカがオレをひょい、と肩に抱えあげて、立ち上がった。 「ぅわ……」 「……夕方……いや、夜には戻る」  そんなことを言ったルカに、皆が苦笑いして、はいはい、みたいな返事をしてるのが、分かる。  ……夕方って!! ……ていうか、言い直して、夜って!!  遅い朝ごはんを食べてから、ちょっと海で遊んで、すこし飲んでだけの今なのに。夜……。 「ソラ。もう行くぞ?」 「――――……」  何で聞くんだ。いつも、基本、無理無理連れてくのに。 「もういいよな?」  じっと見つめられて。  なんかそのルカの向こう側に見える皆は、もう勝手にやってて的な顔で、笑ってるし。  オレは、もう。  …………声には出さず。少しだけ、頷いた。 「OK。じゃーな」  ルカが皆にそう言って、オレを抱いたまま、甲板から階段を下った。  なんかもう。  オレは、抵抗する気も無くて。  ルカに少し、捕まって、運ばれてた。  ……この運ばれるっていうだけだって。  ここに来るまで無かったことだなーと、ぼんやり、思いながら。  こんな人、居なかったもんな。  

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