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「キスしたい」※

 部屋に戻って、二人きりになると、ルカが少し雰囲気が違う、 「潮でベタベタしてるから、シャワー、浴びるぞ?」 「……ん」  ルカは普通に話してる筈なのに。どうしてか、濡れたみたいな、声に聞こえる。  ……熱っぽく、聞こえて。  つられて、心臓が、鼓動が、どんどん速くなっていってしまう。  バスルームで降ろされて、短パンをはいたままでシャワーが掛けられて、流される。確かに、ベタベタしてたから、すごくすっきり。  シャワーを浴びたまま、ルカに抱き寄せられて、上向かされる。  ちゅ、とキスされて、ふ、と笑われる。 「……なんかすげえ、お預けくらってた気分」 「…………っ」  ……ていうか、昨日、したかんね。お預けなんて、してないに等しいからね。と、とっさに浮かぶのだけれど。  でも、そう言われて少し考えると、オレだって、ルカとずっと、キスしたかったなとも思ったりする。  ルカが魔物の中から戻ってきて、皆が先にキッチンの方に降りて行った時だって、オレはキスしたかったのに。  その気になるからキスできないなんて、よく分からないことを言われて、キスしてもらえなかったし。 「……キスしたい」 「ソラ?」 「キス、してよ……」  抱かれたいというよりは、まず、キスされたい。  なんか、今、すごくそんな気分で、ルカを見上げた。 「……は。珍しいな」  ルカはそう言うと、面白そうに瞳を細めて、オレの唇に、指で触れて、なぞる。 「何? キスしてほしかったのか?」 「うん」 「……したいなら、たまにはお前からしろよ」  クス、と笑って、ルカがそんな風に言ってくる。  たまにはって……。ああ、でも、そっか。してないか。  ……言われた時しか、してない。今も結局言われてする感じだけど。  ルカに唇を寄せて、触れ合わせる。唇を開いて、舌で、ルカの口に、触れる。  唇の間で、少し笑うルカの手がオレの背に触れて、ぐい、と、引き寄せる。 「……ン……」  ルカは、今は、受けるだけにしたみたい。  舌が触れてるのは、気持ちいいけど。  いつもみたいに息もできない位に激しいキスは、オレからは難しくて、なんだかすごくもどかしい。 「ん、ん」  ルカの背に、ぎゅうとしがみついて、上向いてキスを続ける。    ルカの舌、熱い。  ――――……触れてると、ルカ、生きててよかったって、心底思う。  ルカは、オレが危なくないように、とか。オレを守る、とか。助ける、とか。  いっつも、そんなようなことを言ってばかりだけど。 「……ンん、ふ……っ」  もどかしすぎて、声が漏れる。  背中にまわしていた手を、ルカの首にかけて、ぎゅ、としがみついて、引き寄せる。  いつもいつも、ルカがオレを助ける、みたいなことばかり、言うけど。 「……ル、カ……」    オレだって、ルカのことも皆のことも。守りたいって思うし、助けたいって思ってる。  得体のしれないオレを受け入れて、大事にしてくれる皆のこと、大好きだし。  ルカのことは。……特別、大好きで。  だから、オレは、本当は、守り合うような関係が、いい。  危ない時は、オレも助けたい。  そんなこと、考えながら、頑張ってキス、してたけど。  もどかしさが限界。 「……も、やだ。ちゃんとして」  少し唇を離して、ルカにそう言うと。 「――――……」  ルカは、ふ、と微笑んで。 「頑張ったな」  クスクス笑うと、ルカの手がオレの後頭部に掛かって、強く押さえつけられた。  そのまま唇が重なってきて、深く合わさる。 「ん、んッ……」  もどかしくて漏れてた声とは、違う。  息が奪われて、ルカの舌が口の中を自由に動くと、ぞくん、としたものが、体を走る。  オレのキスとは全然違う。 「……んっ……ぅ、ん……」  舌を絡めとられて、ルカに甘く噛まれると、ふる、と体が震えてしまう。  きもちいい。はあ、と漏れる息が、熱すぎる。  がく、と膝から力が抜けたけど、ルカは余裕でオレを支えた。 「……まだキスしか、してないだろ?」  濡れたみたいな、笑いを含んだ声で囁かれて。そのまままた、唇を塞がれる。ぞく、とますます煽られる。  ああ、なんかもう。  ルカのキス、気持ちいい。  シャワーの熱気にもあてられて、頭の芯が、ぼうっと、しびれてくみたい。  

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