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「魔力の指輪」
「いつか使えるといいなあ」
オレが言うと、ルカは、クスクス笑いながら頷く。
「まあ、今まで魔法なんて絡まず生きてきたんだし、すぐは無理かもな。人それぞれ向いてる魔法ってのがあるし。使えない奴の方が多い。使える能力がある奴も練習しないと使えねえ奴も居るし。だから普通に生きてる多くの奴らは、もしかしたら使えるかもしれないけど、使わず生きてる」
「なるほど……」
頷いて、考えていると、ルカはオレをまっすぐに見つめながら。
「イメージしやすいだろうから、火って言ったけどな。火、風、水、雷とか、回復、防御、攻撃、結界、白黒、聖。種類も用途も、他にも色々あるからな」
「うん」
そこらへん、知識だけはあるんだよね、オレ。ルカの言葉を聞きながら頷くと、リアが、そうだ、と声を出した。
「魔力の指輪をあげたら?」
「ああ……そうだな。いいかもな」
なんか聞いたことあるぞ。装備のリストにあった気がするけど……。オレ、持ってたっけ。
「魔力の指輪って、今誰か持ってるか?」
「あれはなかなか売ってないよね。特殊な石を使うし」
ルカの言葉にキースが答えて、それからリアが、首をかしげる。
「前持ってたけど、今更少し魔力が上がる位の指輪要らないってルカが言うから、売っちゃったんじゃなかったっけ?」
「どこで売った? 全然覚えてねぇな」
「……うーん……ずっと昔だし。探すより、石採りに行って、作った方が早いかもね。その方が威力も強いの作れるし」
そうなんだ、作れるんだ、ふむふむ、と皆の話を聞いていると。
「じゃあ陸に戻ったら、石を採りに行って、指輪作るか」
「石ってすぐに採れるものなの?」
何気なくそう聞くと。
ルカはニヤ、と笑った。
「まあ、それなりに色々あるとこだけど」
「それなり……」
ルカの「それなり」ってどんなんだろうと若干不安になる。
「まあ、オレが一緒に居るから」
「……ルカいるけどいつも色々あるけど」
「ま、結果いつも、大丈夫だろ?」
「……そーだけど……」
どんなとこに連れてくつもりなんだろうと、ビクビクしていると、アランが「それオレも欲しい」と言ってきた。
「アランも必要か?」
「魔力上がるんだろ? 船の結界張るのに役立つなら」
「魔力の指輪も、いいのは、結構な値段するんだよな……」
ルカがからかうみたいな顔で、アランに視線を流すと、「あ、そうなのか?」とアランは苦笑い。すぐにルカはおかしそうに笑った。
「船出しの礼、それで良いか?」
ルカがそう言うと、アランは少しびっくりした顔をした。
「礼?」
「ああ。今回の礼」
「……つか、これ、オレ達の町の死活問題だったしな。礼はこっちがするもんなんじゃねえの」
そんな風に言ったアランに、ルカは笑う。
「お前が船出さなきゃ、たどり着けなかった。町としては感謝されるかもしれねえけど、アランだけにはこっちから礼だ。まあ、最悪、船が壊れる可能性だってあったし」
「――――……」
ルカが、ちゃんとお礼言ってる。
……アランは少し照れ臭そうだけど。皆は穏やかに笑ってる。
ああ、なんか。こういうルカは。……いいな。
「石探して、良い職人にお宝級の指輪、作らせる。ソラのと一緒にな」
ふ、と笑いながら、ルカの視線がオレに戻ってきた。
嬉しくなって、うん、と頷くと、くしゃくしゃ頭を撫でられた。
「まあお前は、指輪ができるまで、集中する練習、しておけよ」
「うん、分かった」
頷いて、さっきの、ルカの静かな声を思い出す。
集中って言われてもピンとこなかったんだけど、ああやって、意識を集めるみたいな感じで、心ン中と、指先に、集中すればいいのか、となんとなく分かったし。
……魔法習うなら、リアとかキースがいいなあって前思ったっけ。
ルカとかゴウだと、あんまりちゃんと教えてくれなそう、とか。そんなこと無かったな。と、一人で、過去の自分の思ったことに、ルカごめんねと思っていると。
「火が出たら、お前、すっげー喜びそう」
面白そうにオレを見て笑うルカに、それは絶対喜ぶ、とウキウキ返事をして、オレも笑った。
まあなんとなく。オレから出る火が、何かの役に立つことはなさそうな気がするけど。マッチの代わり位になるかなぁ??なんて思いながら。
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