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「くせ?」

 その後またルカに寄りかかったまま、しばらく指先に火を出せないか、チャレンジはしてみたんだけど、無理だった。 「ねえねえ、全く魔力が無い人の魔力を呼び起こすもの、何か無かったっけ?」  と、リアが何か思いだしながら、そんなことを言う。 「えっ。そんなのあるの??」 「……なんかあった気がするね」  キースも、んー、と考えながら。 「あー……あったかもな。帰ったらレジ―に聞いてみるか」  オレがうんうん頷いてると、ルカはクッと笑った。 「魔力がかけらもないのに、指輪つけても確かに無理だもんな。呼び起こせるもんなら……」  言いながら、オレを見て、クシャクシャと頭をなでる。 「その方がよさそうだな」  そんなのあるのか。  じゃあダブルでお世話になったら、オレ、もしかしてほんとに魔法が使えるようになっちゃうかも??  ウキウキしていると、「でもさ」とゴウが話し始める。 「それ確か、好きな属性は選べないんだよな? 勝手に選ばれて押し付けられるとかじゃなかったっけ?」  ゴウが思い出すように顎に手を当てながら、首をかしげてる。 「だから、あんまり使えねーなって思ったような……」 「そうなの? じゃあ、好きな魔法は選べないんだ……?」  ちょっとがっかり……。  少し落ち込んでると。ルカがオレを見て笑いながら。 「魔力が一旦使えるようになれば、他の魔法も少しずつ使えるようになるし。メイン魔法が選べないだけなら、問題ないだろ」 「……そっか、そだね。オレ、とにかく何でもいいから使ってみたいんだった」  ルカの言葉に元気を取り戻してワクワク。   「楽しみ」  オレがそう言うと、ルカは「単純……」と言いながら笑って頭を撫でてくる。 「……あのさあ、ルカさあ……」 「ん」 「頭にさわるの、癖?」 「癖? ……ああ、これ?」  言いながら、ルカがオレの頭をクシャクシャと撫でまくる。 「ぅわ」  めちゃくちゃクシャクシャにされて、あーもう~!とルカの手首をつかんで止める。悪戯っぽく楽しそうに笑うルカに、もーほんといじめっ子気質だよなと思いながら、髪の毛を整えてると、皆が笑う。 「ルカが誰かを撫でてるとこなんて、初めて見たよね」  リアが笑いながら言って、キースとゴウを見やると、二人も可笑しそうに笑う。 「大体ルカの柄じゃねえじゃん、頭よしよししてるとか。分かるだろ」  ゴウに言われて、いや、でも、オレいっつも撫でられてるから、と心の中で思いながら首をかしげていると、キースがクスクス笑う。 「ソラはいっつも撫でられてるから、ルカの柄じゃないとか思わないよね」  その言葉にちょっと頷きながら、オレを面白そうに眺めてるルカを見上げる。 「心配してんの?」 「……? 何を?」  ルカの言葉の意味が分からなくて、聞き返すと、ルカはぽん、とオレの頭に手を置いた。 「オレが他の奴の頭も撫でてんのかって」 「……してないよ、そんな心配……」  完全にからかいモードの表情に、オレはちょっとムカついて、軽く睨みながら返すと。楽しくてしょうがないみたいな顔でオレを覗き込んで、と思ったら。 「――――……」  キス、された。 「…………っ」  だーかーらーー。  皆がいる前でキスされるのとか、やっぱやなんだってば!  ちょっと慣れてきてしまった自分が怖いけど、でもやっぱり、恥ずかしいんだってば!!  ルカの首の下あたりに手をおいて、ぐいー、と離させると、ルカはおかしそうに笑い出すし。もう完全にからかわれている。 「もうほんとルカ」  嫌い、と言いかけて。  あ、と止まる。  嫌いって言わない約束を思い出した。 「ん?」  多分言いかけた言葉も、止まった理由も分かってるルカは、クスクス笑いながらオレの頭をまた撫でる。 「ソラ見てると、撫でたくなるんだよな。なんでそーなんのか分かんねーけど」  笑いながら言って、オレの頭をなでなでしまくってる、ご機嫌な勇者に。  何だか反論の言葉も出て来ない。  

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