265 / 290
「ズルすぎる」
ちゅ。
ゆっくり、ゆっくり、重ねる。
触れるだけ。
ルカは動かないけど。……触れてる唇が、ふ、と緩むのが分かる。
なんか。……笑ってるし。
少し離れて、微笑んでるルカの顔を見つめてから、そのまままた角度を変えて、重ねる。
男にこんなキスしてること、日本に居た時のオレが知ったら、何て言うかなあ。
頭おかしくなったのかーとか。慌てて言いそう……。
少し笑ってしまいそうになったので、舌でぺろ、と唇に触れてみる。
ルカの手が動こうとしたので、ちら、と顔を見る。
「動いちゃだめ」
む、と少し睨むと、ルカは苦笑い。
柔らかくキスして、離して、また重ねる。
ルカのキスは、重なるとすぐ、激しくなっちゃうから。
たまにはこういう方がいいな……。
ルカの唇に触れるか触れないかのところで、す、と唇をなぞった。
あ。
なんかこれ、ぞく、とする。かも。少しだけ触れてる感が、なんか……。
思った瞬間。
「……っん、……ッ」
後頭部にルカの手がかかって、それに力がこもる。ルカに押し付けられるみたいにされて、深く舌が絡んでくる。そのまま体勢を変えられて、ルカに組み敷かれる。
息、苦しいのだけど。
……なんか……ぞく、として、もっと、ちゃんとしたいかもと思った瞬間にこれだから。
そう思ったの、バレたのかな。
「……ん、ふ…………」
にしても。
……激しすぎ。
やっと離れた唇が、首筋に触れると、ぞく、と震える体。
「……寝かせてやろうと思ってたんだけど」
「――――……」
「抱く」
そんな風に短く言うと、ルカは邪魔そうに上の服を脱ぎ捨てた。
寝かせてやろうと、思ってたんだ。
……だよね、今日、めちゃくちゃ、したもんね……。
熱くて大きな手が、胸に直に入ってくる。
「……ルカって」
「ん?」
「……できない時、無いの?」
「なんだその質問」
ものすごい苦笑して。
「無いな。とりあえずお前に関しては」
と笑う。
……絶対嘘だ。
別にオレじゃなくたって、絶対、いつでも誰とでも、できちゃう人だ。
そういう欲すげー強いと思うし。はーやだやだ……。
「……何考えてんの、お前」
クスクス笑いながら一度胸から手が離れて、代わりに脇に入ってきた手に体を引き上げられて、ぽふっと枕に頭を沈めさせられる。
上にルカが居て、また、頬に触れ直すと。
何だか、首の後ろ、ぞく、としたものが走る。
「別にオレ、いつも誰とでもシてた訳じゃねーぞ?」
「……」
「相手は選んでたし。……敵かもっつー、リスクも考えてたし」
「……それはそうなんだろうけど」
「ソラが相手だと、ただ気持ちいいしかねえから」
「――――……」
ふ、と笑ってるルカを見上げて、ちょっと黙ってから。
「……オレ、のこと……他の世界の奴だから、信じられるから、なの?」
「ん?」
「オレだって、敵かもしんないじゃん……」
「ソラが?敵?」
何を聞きたいんだか。
自分でも良く分かんないけど。そんな風に聞いてみていた。
……オレが、他の世界の奴だから、ルカが、安心して抱けるから。
だから抱く?……だけ?とか。
「……ソラが敵なら……まあ、殺されてもいいかな」
「……つか、何それ」
「さあ。……今そう思っただけ」
「いいの?」
「良くはねえけど。お前が敵ならいいよ。殺されてやっても」
「……いいわけないじゃん。皆困るし」
なんかあんまりな返答に、もともと何が聞きたかったかもわからないんだけど。
……なんか、じっと、ルカを見つめる。
「ソラならいいかな、と思っただけ」
「――――……よくないし」
何だか泣きそうな気分になって、睨むと、ルカは、ふっと笑った。
「お前が、大事ってことだと思うけど?」
「……そんな言い方されても良く分かんないし……」
むむ、と睨んでると、ルカは笑いながら、オレの顎を掴んだ。
「他の世界の奴が、何人来たって、少しもこんな風には思わねーよ」
言いながら、なんだかもう胸がいっぱいになってるオレに、深く、唇を重ねてきた。
なんかずるい。殺されてやってもいい、とか。ずるすぎ。
絶対本気じゃないのは分かってる。
なんだかんだ、魔王を倒すっていうのはちゃんとやるつもりなんだろうし。
オレなんかにやられてる場合じゃないだろうしさ。そんなの分かってるけど。
そう思いながらも。
「――――……ん……」
……あーあ。ずるい。ルカ。
何も考えずに言う言葉が、ずるいんだよ。もう。
ぎゅ、と抱きついた。
ともだちにシェアしよう!