267 / 290

「平和な朝」

 翌朝。ルカの腕の中で目覚めた。  抱き締められて、起きるの、もう何日目だっけな。  ……好きかも、て。  「かも」って言っちゃったけど。    ……好き。は。  日本に居た時みたいな、可愛いかも、良い子かも、とか。そんな「好き」じゃない。  一緒に居たい。ルカの側に居たい。  ルカが頑張るなら、助けたい。  オレが、ここに居られる限り。 「……ソラ?」  でっかい手が頭に触れて、くしゃくしゃ撫でられる。 「……目、覚めたか?」 「ん。おはよ」  頬に触れられて、なんかもう流れるようにすんなりキスされて。それがゆっくり離れる。 「……朝ごはん、作ってくるね」  ゆっくり、ルカの腕の中から抜けて、服を着た。   「甲板で食べようぜ」 「うん、分かった、アランに言うね」  一緒に部屋を出て、ルカと別れて、キッチンのところに向かう。もうアランは作り始めていた。 「おはよー、アラン」 「おはよ。ソラ、こっち任せるー」 「うん! 焼けばいい?」 「あぁ」  アランからフライパンとお箸を受け取って、ジュージュー焼きながら、「甲板で食べたいって」とルカの言葉を伝えた。 「ああ、オレもそう思ってた。すげえいい天気だから」 「そうなんだ」 「食べやすいもん、作ろうぜ」 「うん」  笑って返して、少し慣れてきた、この世界の食材たちで朝ごはんづくり。  できたものをとりあえずひとつ、甲板に運んだら、皆も甲板にいて、運ぶの手伝う、と一緒にキッチンに降りてくれる。  飲み物や食べ物、色々皆で運んでると、頭上をミウがフワフワととんでることに気づいた。 「あ、ミウ、おはよ」  言うと、可愛く笑って、飛んだままオレの頬にすり寄ってきた。  はは、可愛い。料理を置いてから、ミウを腕に抱く。 「もうそんなにないから、オレとアランだけで大丈夫」  皆にそう言って、オレはミウと一緒にキッチンに降りる。 「アラン、運ぶもの、まだある?」 「んー。ちょい待ってて」 「うん。なんかすっごいいい匂いするね」  フライパンに蓋をして何かを蒸し焼きみたいにしているのだけれど、なんかすごく香ばしい匂い。 「あと少し。……あ、ミウ、戻ってたんだな」 「ん?」 「夜は居なかったから」 「今、途中で会った」  ね、とナデナデ抱き締めていると。 「ミウって一応魔物だろ?」 「うん。そう言ってたかな?」 「魔王が消えたら、世界から魔物は消えるって言われてるんだけどさ。だからルカ達は頑張ってるんだと思うけど」 「うん。……あれ?」  なんか今、嫌なことが浮かんだ。 「え、ミウも魔物だから、消えちゃうの……?」 「いや。分かんない。ミウは結界を張ってるのは知られてて、だから魔力があるって言われてるけど……まあ、あの移動魔法見たって、魔力があるのはもう確定だけどさ。でも魔物って言っても、人間襲ったりするわけじゃないからな。魔王が生み出してる訳じゃない気がするから」 「そしたら……魔王に関係なかったら、消えない?」 「多分。魔力がある人間もいるけど、魔王には関係ないわけだから、ミウも、魔力がある動物、てことだよな。消えないんじゃないかと思うけど。……まあ、確信はないけど」 「――――」  自然と抱き締めている手に力が入る。 「消えないよね。悪い魔物じゃないもん」  希望願望入りまくりで言って、ミウを抱き締める。 「まあオレもそう思う。こいつ、ソラのこと、めちゃくちゃ助けてる気がするし」 「うん。そうだよね」 「……でもやっぱ、不思議」 「うん?」 「ミウがこんなに懐いて、ソラを助けるのはなんか理由がありそうって思っちまうけど」 「――――理由かぁ……」  ミウに会ったのは、ルカと外でとんでもないことしてた時で。木に押し付けられて、上、向いたら。飛んできた。  ――――なんて言えない。 「ミウと会ったことないの?」 「ないよ。こんな可愛い子、会ったら忘れないよ~」  ぐりぐりミウを撫でながら、そう言う。 「初めて会った時は、ミウが空から降ってきて、オレの腕の中に入ってきた、て感じ」 「ふうん……初めて会った時から懐かれたってことか~。すげー不思議。ミウは、超自由な魔物って聞いてるのに」 「……まあ確かに、ミウって自由だよね。どこでも行けるし、攻撃とかも受けなくて強いし。まあでも、一緒に居てくれて嬉しいけど」  ミウを抱き上げて見つめると、ミウは可愛くニコニコしてる。 「あ、そろそろできたかな」  アランが蓋を開けると、すごい湯気が一瞬上がって、いい匂いが立ち込めた。

ともだちにシェアしよう!