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「あれ?」

「ソラは、酔うとどうなっちゃうんですか?」  ユイカはクスクス笑いながら言った。 「んー……寝ちゃう? 気持ち悪くなったりはしないんだけど」 「そうなんですね」 「ルカに、飲みすぎんなって言われるからさ」    ルカのしかめっ面を思い浮かべて、ふふ、と笑いながらそう言うと、ユイカがオレをじっと見つめた。 「ソラは、王子の恋人なんですか?」 「えっ」  いきなり聞かれた質問に、オレも、ユイカをじっと見つめ返した。 「恋人……」  ……恋人になろうとか、付き合おうとかは、言ってないような?  でも、会ってからずっと一緒に居て、これからも、ずっと一緒にって言って、オレはお城に帰ったら、ルカのために花嫁修行……。ううんー?? 「んーちょっとよく分かんないや」 「――――」 「でも、一緒に居たいなって思ってるけど」  ユイカは、何だかすごく、じっと見つめてくる。 「……どうしたの?」 「あ、いえ……あの」 「うん?」 「私、すごく大切な方が居るんです、けど」 「そうなんだー」 「……すごく慕われている方なので」 「へー、そうなんだ……アランのこと??」 「誰ですか?」 「あ、アラン、知らない?」  アラン、この町では、有名なのかと思ってた。特に女の子には。  知らない女の子も居るのか、とクスクス笑ってしまう。  あ、それに、「慕われて」ってことは、偉い人ってこと、かな?  「あ、いえ……アラン、じゃない、別の方、なんですけど」 「うん。そうなんだ。いいね、大切な人」  そう言うと、ユイカは、ふっと止まって、オレをじっと見つめた。 「……ん?」  ゆうに何秒か、見つめ合ってしまう。とそこへ、なんだか騒がしく近づいてくる人達。 「こーら、ソラ!」  踊ってたリアが、何人かの女の子たちとともに戻ってきて、オレの隣に座った。ちょうどユイカの反対側。 「あ、リア、お帰り。すっごい踊ってたね」  リアは、気持ちよかった、と笑ってから、オレの耳に口を寄せた。 「ルカ、見てたよ」 「え?」  ちょっと離れて、リアの顔を見つめると、リアはクスクス笑いだした。 「女の子といい雰囲気で二人だから」 「え」  ユイカのこと?  ……ていうか、あんなに囲まれてる人に、見られてたって。  と、少し離れて人に囲まれてるルカを見ながら、ちょっとむー、と口が尖ってしまう。 「あれ? ソラ、ミウは居ないの?」 「あ、ミウはさっきからずっと町の女の子たちに餌付けされてるよ」 「……可愛いもんね」 「うん。食べてるとこ、天使だよね」  顔を見合わせて、ふふ、と笑い合ってると、その視線の端に、オレのグラスに、ユイカが果実酒を注いでいるのが映った。 「あ」 「え?」 「んと……これで終わりでいいよ?」  ユイカを見てそう言うと、「あ、ごめんなさい」とかしこまるので、何だかちょっと申し訳なくなって、「まあ、これくらいは平気なんだけど」と付け足して言って、一口飲む。 「――――……」  ふわっとした感覚と。続いて、くらくら、と変な感覚。  ――――……あれ?  ん……そこまで飲んでないよね、オレ。  これ、ものすごく強いお酒だったりするのかな。それとも、踊っちゃったりしたから回ってる……?   「あたし、ミウ、お迎えしてこようか?」  リアの言葉に、ふっとリアに視線を向ける。なんか、少しぼやける。 「あ、うん……」 「じゃあ連れてくるね」 「うん……」  ……どうしよう、なんか、気分悪いって、言おうかな。  どうしよ。  思ってる間に、リアが立ち上がって、離れていく。  すぐ、戻ってくるかな。戻ってきたら……ルカに……。  そう思った瞬間、手からグラスが滑った。

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