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「白い空間」
ルカと浮かびあがった、その目の前。
魔王が、飛んでいた。
「――勇者……何故ここが分かった?」
魔王も空を飛んでいて、ルカと対峙する。
「お前の手下の移動魔法――仲間が途中までは追った。そこからは、お前の影響で強くなった魔物たちの情報で、いくつかあたりをつけた。もう逃がさないからな」
――あの時……リアが、追ってくれたんだ。リア、ありがとう……。
でもって、ルカの強気な発言は、カッコいいのだけれど。
――逃げた方がいいのは、今この時は、オレ達ではないのだろうか。
だって、ここに来れてるのは、ルカだけで。ミウも、オレ達近くを飛んではいるけど。戦いには役に立たないだろうし。――ここ、魔物もたくさん居るし。ヤバいのでは。
「ルカ、いったん、ここ、離れた方が……」
「冗談だろ。倒す」
「――っオレ、抱えてじゃ無理、でしょ」
魔王だよ、魔王。
メンバー皆が揃ってたって、長時間戦って倒す、最後のボスだよ!
いくらルカが強くたって……ていうか、しかも、ここ、魔物がたくさん居るし!!
「無理って、誰に言ってんだ、ソラ」
「……っ」
強気なセリフも、本当に倒せそうな、その感じも、ひたすらカッコいいんだけど、でも絶対、オレ、邪魔だし……!
「仕方ねえな、ミウ、ソラだけを皆のところに――」
「――っっやだ!!」
ぎゅ、と抱き付く。
せっかく、やっと、会えたのに!! ルカ、一人でこんなとこに置いてくなんて無理!!!
「無理!! 行くなら、一緒……!!」
ぎゅう、と抱き付いて、そう言うと、しばらくオレを睨んでてたルカが。
ふ、とため息をついた。
「今なら倒せる気がするってのに――ソラをさらうなんざ、怒り限界だし」
うぅ。本気で怒ってる、みたい。
瞳の青がキラキラ光ってて。……いや、ギラギラ? なんか、ルカの周りが、熱い。
――怒ってくれて嬉しい。今のルカは、強そう。でも。
でもあいつは、全員揃ってやっと勝てる設定の、最後のボスだからー!!
……ってゲームと一緒ならだけど! わー、もう意味分かんないけど……とにかく無理!!
「ルカ、お願いだから、一緒に――せっかく、会えたのに、離れるの、嫌だ!!」
「――っ」
ルカがオレを見て、少しだけ険を解いた、その時。
魔王が何かを唱えた。何かの魔法。大きな、炎の塊がこっちに向かってくる。
え、やば――思った時、ルカが、オレを、抱きかかえて、何かを唱え――――。
その、時。
体が、光に吸い込まれた、感覚。
「――――……?」
――想像した、どんな衝撃も、音も、何も来なかった。
それどころか、見渡す限り、白い空間。城も魔王もユイカも魔物たちも、何もいない。
フワフワした、白い、雲のようなものに立ってる。
なにこれ。
今の、攻撃で――死んだのかな、オレ。
足元を見ると、ルカが、倒れてる。
「る、か?」
ルカが、倒れてる姿なんて見たこと無い。
めちゃくちゃ焦って、ルカの顔に触れると――息は、してて。特にどこか怪我したりしてる風ではなかった。
え。息してる、てことは。死んでないのかな。
寝てる、のかな……? ミウは……? 思って、見渡すと、遠くの方にぷかぷか浮いてるのが見えた。
「ミウ!」
オレが呼んだら、ミウは、ぽよぽよと、いつも通り、オレに向かって飛んできて、オレの腕の中に入った。
ミウだけは――なんか、いつもの、感じで、ホッとする。
まっ白いこの空間も、雲みたいな足元も、こんなとこで寝てるルカも。
なんだろう、これ、夢?
――――あれでも。
オレ、ここに……居たこと。あった……??
脳みその端っこ迄、記憶を探す。
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