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「信じる根拠ってやつ」
それからリアの魔法で、シャオの町に戻った。
連れ去られて魔王の城で目覚めて、魔王と対峙して、それから神と会って、と、かなりの怒涛の時だったため、オレ的にはあっという間で、そんなに時間が経ったようには感じていなかったのだけれど。
待ってる皆にはそうじゃなかったらしい。
あの時、大騒ぎで楽しそうな宴をしていた場所は片付けられていて、静かだった。キースとゴウ、アランとジェイが待っていてくれて、皆は、オレを見るなり、それぞれ安堵の表情を浮かべた。とりあえずオレの無事を確認すると、ルカとリアに「お疲れ」と声をかけてる。
「とりあえず、店に行こうぜ。何か作ってやるから」
そう言われて、ジェイの店に行くことになった。
誰もいない店のテーブルに座って、ジェイが手早く作ってくれた料理を囲んだ。
――こんな風に囲んで、そこにお酒がないことがいままでは無かったので、皆が真面目に話そうとしてるのが、それだけでも分かった。
オレも――あったことを話して、理解してくれるのか、だいぶ心配で、ドキドキだった。一応、神の二人のことはルカも見てるから、そこは信じてくれるかもだけど。
「んで。結局ソラは、どこに連れていかれてたんだ?」
アランがそう言うと、皆が一気にオレを見る。
「……魔王の城」
そう言うと、ルカとリア以外の皆は驚いた顔を見せる。
「なんで?」
「ソラがそんなとこに連れていかれる理由は?」
アランとジェイは、すごく不思議そう。
リアとキースとゴウがじっと話を聞こうとしているのは、オレが突然現れたことにも関係するって、もしかして思ってるのかもしれない。
「夢みたいな話って、思われるかもしれないんだけど……」
オレは、皆に向かって、話し出した。
突然この世界に連れてこられたこと。
最初は夢かと思ってたこと、でも現実としか受け取れなくて訳が分からなくなってたこと。
それから魔王にさらわれて言われたこと、突然現れた神の言ってたこと。オレがいわゆる「転移者」だってことも、なんとか説明をしてみた。
ゲームの世界を再現した世界っていうのが説明しづらかったけど、とりあえず、キャラがどうとかの話は置いておいて、好きな世界を神が再現したってことだけ伝えた。
だってなんか……皆、元が作り物のキャラって聞いたら、なんか嫌だろうと思ったから。
ミウとの出会いのことや、魔王も転移してるってことは、なんとか伝えた。
――魔王にそういう意味で襲われそうになったことも省いたけど、そのふたつ以外は、途中で言葉に詰まりながらも、オレは知っている限り、全部話した。
結構、長く、かかったと思う。全部話し終えた頃には、喉が乾いていた。
皆が驚いてたのが、この世界を作ったっていう神の存在。それからオレがそれに会って話してきたってこと。
信じてくれなそうなところに、ルカが一言。「オレも会った」と言ってくれたので、話は進んだ。
話しているあいだ、ルカの視線が外れない。見守ってくれているのがその視線で分かって、少し落ち着いて話せた。
でもルカもしばらくは眠らされていたし、全部は聞いていないから、証人となるわけでもないんだけど。
オレが話し終えた後は、いろいろ質問されて答える。でもすぐに質問が減っていったのは多分、何を聞いていいのか分からないのもあると思う。
会話が途切れたとき、アランがちょっと頭を掻いた。
「じゃあ――ソラは本当に、違う世界から来たって言うのか」
そう言って、ジェイと顔を見合わせている。
「なあ、ルカ」
ゴウとルカが視線を合わせて、すこしの間、見つめ合う。その後、ゴウがゆっくりと言った。
「ルカは、今のソラの話、全部信じるのか?」
「――どういう意味だ?」
ルカが、一拍置いてからそう聞くと。
「神って名乗って魔法を使う奴に、変な場所で会ったのは、ルカも見てるからそうなんだろ。で、ソラが魔王のところに連れ去られたのも事実。それは分かる」
「ああ」
「――ソラが違う世界で生きてて、で、オレらの世界を神が作って――二つの世界を、ミウやソラが移動してる。……そこは、神と名乗る奴らが言ってただけだろ。ソラが聞いて、それをオレ達に言ってるだけだろ」
「――まあ、そうだな」
「そんな、よくわかんねえこと、あんのかよ。頭痛ぇわ」
「でも、ミウがソラにくっついてる理由としては、私は結構納得したけど」
「そうだね。――まあ、神が世界を作ったって考え方は昔からあるしね……」
リアとキースも、二人とも顎に手を当てて、めちゃくちゃ眉を寄せて考えているっぽい。
そうだよねえ……。信じるには根拠ってものが必要だと思うけど、オレの話にはないんだよね。
向こうの世界には、転生物なんてジャンルの小説があるし、読んだことはないけど、内容はなんとなくは知ってる。
なんならオレ、転生って本当にあることだったのかー!
……みたいなノリもあるのだけど。
その感覚、皆にはないもんなあ、と大きなため息をつきそうになって、堪えた。
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