303 / 303

「全面的に信じる」

 テレビも漫画もない世界だからなぁ。  やっぱり平和じゃないと、エンタメは発展しないよね。  予備知識も何もない皆に、こういう話を信じろって言う方が、無理だよね。  んー、どうしたらいいんだろう。  信じてもらうために、少し考えてみたけれど。  ……まあ皆が信じる信じないは、実際にはあまり関係ないのかなと気づいた。  オレが、こっちに残るか、戻るか。  自分で選ばなければいけないって話だから。  皆がそれを信じようが信じまいが、変わらないのかもしれない。  とりあえず、こういうことだったってことが分かってくれれば、もうそれでいいのかもな。  皆に、とりあえず話を聞いてくれてありがと、と言おうと思ったそのとき。  ルカが一度、ため息をついた。  ん?とルカに視線を向けると、皆も、自然とルカを見た。  その視線の中央にいるルカは、ゆっくりと皆を見回してから、オレを見て言った。 「ソラがこの嘘をつく理由がない。何の得もない。オレが見た神だって言ってた奴らは――確かに、普通の奴らとは違った。これはもう勘だが」  そこまで言ってから、ルカはオレの肩を引き寄せた。  それから、ゆっくりと、皆に目を向けながら、言った。 「オレは、ソラを信じる。全面的に、だ」  強く言い切ったルカに、皆はぽかん、と驚いた顔をして。  ――それから少しして、呆れたように、それぞれが笑い出した。  オレはといえば――至近距離にあるルカの顔を、ただただ、見上げるばかり。 「了解。――分かったよ、ルカ」  皆がまだ笑うなかで、キースが、ルカとオレを順に見つめた。 「オレたちも、ルカとソラを信じる。そのうえで、動こう」  そう言われて、オレは、ルカを真下から見つめた。  こんなの。こんな顔で信じるなんて言われたら。  ……反則なくらい。嬉しくなってしまう。  ルカ、ずるい。  ちょっと泣きそうになって、ついつい睨んでしまう。  オレの視線に気づいたルカは、ニヤと笑って、オレの頭にその手を置いて、くしゃくしゃと、撫でてから、言った。 「ジェイ、酒! つまみも出せよ!」 「はー?? 偉そう」  言い返しながらも、ジェイは笑いながら立ち上がる。 「アランも手伝えよ」 「はいはい」  ジェイとアランが台所に向かおうとしているのを見て、オレも、立ち上がった。 「オレも手伝う!」 「――休んでたら?」 「やだ! 何かしたい」  ジェイの言葉にそう言うと、二人が「じゃあ来い」と笑う。  歩きだそうとした手を掴まれて振り返る。 「ん?」 「少し待て」  そう言ってルカは、自分の小指にしていた指輪を外した。オレの左手を自分の左手にのせてから、オレの指にはめだした。 「ルカ?」  皆が見てる中、ルカはオレの指にサイズが合わないとすぐ抜いて、また隣の指にはめていく。オレの手をのせてるルカの手が、温かくて、気持ちいい。 「ここでいいか」  オレの薬指にちょうどよくはまった指輪。  ……え。オレの薬指のサイズって、ルカの小指とぴったりなの??  ちょっとすごく不満な部分はあるのだけど。  左手の薬指にはめられた指輪を、じっと見つめる。 「それなら切れないから」  そう言われて、指輪が結界の話と繋がった。 「……お揃いでなくてもいいの?」 「なくても張れる。ものがあった方が少し楽な程度だな」  なるほど。……そっか。  と、指輪を見つめていると、ルカはニヤッと笑った。 「店に行ったら、そろいの指輪、買ってやるから。それまでな」 「べ……別に、そんなこと言ってないし!」  少し見透かされた気分で、慌ててそう言い返すと、オレはジェイとアランと台所に向かった。    ――ていうか。  別におそろいが良かった、てだけじゃなくて。  ……この指ってさ。結婚指輪、はめる指じゃん。  あの感じだと――たぶん、結婚指輪っていう概念は、無さそう。  でも。  ……オレには、あるんだよね。  指輪を見つめていると。勝手に零れる笑みを、噛みしめた。 (2026/2/22) ルカが好きな人ー?(^O^)/ (っ´ω`c)

ともだちにシェアしよう!