4 / 6

第4話

 だんだんと、俺たちは離れていった。  少しずつ訪れたそれを俺は黙って受け入れる。  夜、貸し倉庫で待っていても勇魚は来ない。それでも、逢ったときには何も言わずに激しく抱き合った。これで終わりなのかもしれない、その気持ちのままに勇魚を抱きつぶす。  そんな俺に勇魚は何も言わない。  俺も何も言えなかった。  夏が終わって、秋がやって来て、それから冬が来る。  約束をしなくなった俺たちは、ほとんど逢うことがなくなっていた。そうして俺の隣が空くと、そこに立ちたがる者が増えた。親の商売柄だったり、外の人間と逢う機会の多い俺は、女の子達の憧れだったらしい。そういわれて、面食らう。  でも、勇魚先輩とすごく仲が良かったから。  そう口ごもる同級生に、そうか、と息を吐いた。  差し出された柔らかい手に心が揺れた。その姿に身体に嫌悪を感じることはなくて、縋れば忘れることができる気がした。けれど、もうすぐ受験を控えている勇魚のことを考えた。  もう別れているようなものだけど、もう忘れられているのかもしれないけれど、でも、動揺させるのは嫌だから。  俺はその手を取らなかった。 「好きな人が、いるんだ」  囁いた言葉に嘘はなかった。

ともだちにシェアしよう!