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第18話

 送られてきた住所は高層マンションだった。エントランスホールにはホテルのようなレセプションがいて、話が既に通っているのかすぐにドアを開けてもらえた。 「了、わざわざ来てもらってすみません」  福嶋はいつもと変わらない様子で、怒ってはいないみたいだった。極限まで張り詰めていた緊張がちょっと緩まる。一週間会っていなかっただけで福島の顔を懐かしく感じた。シャツとジーンズのラフな姿を初めて見たけれど、目をそらしてしまいたくなるくらい様になっている。 「あ、あの…この前落ちたときのお怪我は大丈夫ですか?」 「何ともありませんよ。こう見えて結構タフなんです」 「よかった…」  とりあえず大事には至っていないと知ってほっとする。  玄関を抜けるとすぐに大きいリビングが広がっていた。天井から床まで張り巡らされた一面の窓からは東京の夜景が一望できる。 「わ…すごい眺めですね」 「そうでしょう? 映画版コリーノの冒頭シーンを見てもらって、こんな夜景のマンションにしてくださいって不動産に頼んだらここになりました」 「相変わらずぶれないリクエストですね」 「でも、素敵でしょう? 気に入ってるんです」 「コリーノグッズがなければ、オシャレな内装ですね」  窓の両脇にずらりと配置されたぬいぐるみたちをちらっと見やる。 「何言ってるんですか、彼らがこの家の主役ですよ?」 「好きです」 「…え?」 「は?」  軽口をいつも通り返すつもりだったのに、自分の口から突然飛び出た言葉が信じられなかった。一瞬で整理していたはずの頭の中がぐちゃぐちゃになって、余計パニックになる。 「あっえっと、違うんです、僕がなんで来たかって、突き飛ばしてしまってすみませんでしたって謝りたくって、あの時僕…びっくりしてしまって咄嗟に助けることも出来ずに本当馬鹿で…でも突き飛ばすつもりはなくって、福嶋さんはもう帰るからって今も告白するつもりなんてなくって、えっと、僕何言ってるんだろうもうよくわかなんないですね、ほんと何もかもすみません」  穴があったら入りたいどころかいっそ死んでしまいたい。恥ずかしさと情けなさで半泣きになりながらきびすを返した。ドアに手を掛けたところで後ろから抱きしめられた。心臓がぎゅっと硬直する。 「了。待って、落ち着いて」 「ご、ごめんなさ…」 「大丈夫だから、こちらに座って」  促されて皮の質感が心地よい大きなソファの隅に連れられると横に福嶋も腰を下ろした。何度も優しく頭を撫でてくれ、ようやく少し落ち着いたが顔だけは赤いままだった。

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