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落ち穂拾い的な 社長キャラ崩壊
「かっっゎいかっ………………っ」
デスクに着くなりそう叫んで突っ伏した兄に冷たい目を向け、
「それが遅刻の言い訳なの?」
と、言語が崩壊した姿に呆れかえりながら言い放つと、やっと自分の状況を理解したのか咳ばらいを一つして姿勢を正す。
兄が「番を迎えに行ってくる」と、そう言ってすべての業務を僕に押し付けて行ったのは昨日のことで、あんなに身もだえしながら思い煩っていた相手を連れてきて次の日に僅かの遅刻で済ましたのだから、まぁ頑張った方だろう。
だからと言って、遅刻していい理由にはならない。
「で?結局どっちなの?」
「……黒い方だ」
兄の言葉は簡潔で分かりやすい。
なるほど と頷いて見せると、兄は何か聞かれたがっているような顔をしている。
聞くべきか?
無視するか?
時間も押しているのは良くわかっているが、一日中この目でこちらを見られてもたまらない。
正直、こっち見んな て怒鳴りたい。
「迎えに行ってどうだった?」
「かっっゎいかっ………………っ」
拳に込める力を強めて同じ言葉を呻く兄を放り出してやりたい気持ちで、辛抱強く促してやる。
「俺が行った時、俺の上着を羽織っててな 袖が、ちょこっと、袖、 ちょっとだけ 手 手、手が、て て 」
どんどん語彙力の無くなって行く姿は社員に見せられないな と思いながら、はいはいと頷いて返す。
「それで、それがいいって、 ぎゅ って ぎゅってな、ぎゅーって 」
もうその両手が何を表現しているのかわからないくらいにワキワキと奇妙な動きを繰り返している。
「ちっちゃ にこ、にこーって、ぽわって、にお 匂い あああああああああ」
「ああ、はいはい」
感極まって突っ伏した兄に冷ややかな視線を送るが気づいてはいないだろう。
ああ……これが、我が社のトップか。
END.
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