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雪虫2 33

「今っセキくんが雪虫のタグを追いかけてくれてるからっ!一度落ち着くんだ!」 「タグ タグっ!」  部屋を飛び出して転がるように一階に降りると、青い顔をしたセキがタブレットを持ってリビングの隅でじっと蹲っていた。  幾人もの黒服の男が忙しなく動き、蒼白の顔色のままぐったりと倒れて介抱されている直江が見える。  雪虫のために、あれ程掃除に気を付けていたリビングはメチャクチャで……埃っぽい臭いに思わず顔をしかめてしまう。  鼻を押さえながらタブレットを抱き締めたまま微動だにしないセキの方へ駆け寄ると、動揺を隠せないままの表情で窺うように視線が動いてオレを見た。 「セキっ!雪虫はっ⁉」 「タグ で、追えるだけは  」  そう言って差し出してくるタブレットをひったくるようにして受け取り、その画面を睨みつけると市街地図らしきものと、点滅するものがある。  ここ、に。 「ここはどこだ?」 「   」 「セキっ!雪虫が攫われたんだ!早く教えてくれっ」 「   っ こ、ここ、は  」  ブル と震えたセキの体が崩れたように見えたのは、堪え切れなかった涙をオレに見せないように突っ伏したからだった。 「セキっ!急いでるんだっ!いい加減にっ  「大神さんがっ」  オレの言葉をかき消すように響いた声に、リビングにいた人々の視線がこちらに向く。  その視線が、この場所以外で何かが起きたのだと 知らしめて……  跳ね上がっていた心臓の辺りがひやりとして冷たい底に落ちて行く気がした。 「 ────事故に、遭ったって」 「 っ」  一瞬、カチン と歯が鳴った。  震えが全身に回る前に唇を引き結んで、堪えるように拳を作る。 「  …………」  真っ白になった頭の片隅で、いつの間にか大神が来たらいつもの調子ですべてを解決してくれるんじゃないかって……  どこかで思ってしまっていたことに気が付いた。 「お付きの人が連絡をくれたけど、大神さんに掛けても出てくれなくて……」 「それって  」 「し しずる  どうしよう……」 「ど う、って」  縋るように見上げられてもオレには出せる答えがなくて、足元がぐらついた気がしてふらりと壁に倒れ込む。  オレを見て泣いているセキにも、  オレに手を伸ばして泣いていた雪虫にも、  何をすればいいのかわからなくて頭の中は真っ白なままだ。 「  っ」  オレは、 「……こんな時に、   」  自分が番にしようとした相手が目の前で掻っ攫われたって言うのに、何も策を思いつかないまま立ち尽くすしか出来なくて……  自分ではしっかり生きていて、それなりの修羅場を経験している なんて高を括っていたけれど、それはすべて大神達の庇護の下でのことなんだって、思い知ってしまって。

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