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雪虫2 34

「 ぉ、れ  」  窺うようにこちらを見上げていたセキの目が揺らいで、その瞳の中に落胆が現れた途端俯いてしまう。  震える指先でたん たん とタブレットの画面を叩いてから無言でこちらに差し出してくる。  向けられた画面には拡大された地図と、周辺の建物の名称が表示されていた。 「……ここが、最後にタグが通過したところだよ」 「…………」  こちらを見ない横顔と呟くような暗い声は、この状況下にまごついてしまっているオレに失望しているものだ。  無力で、  情けなくて、  ちっぽけだと言われたようで……  いざと言う時に全然頼りにならない存在なんだって、思われてしまったことにがつんと頭を殴られたような気がした。  こんなことじゃ、駄目なんだって。  ぐっと拳を作り、泣きながらこちらに手を伸ばした雪虫を思いながら周りを見渡す。 「  セキ!瀬能先生が降りてきたら直江さんを診て貰って!多分ヒートフェロモンにあてられただけだと思うけど。直江さんが動けるようになったら、ここは危ないから他に移動して!それから   っ大神さんと連絡を取り続けてくれ!連絡が取れたら大神さんの指示に従えばいいし、その前にもし  」  全身の毛穴が開いたかのようにぶわりと体の熱が上がって、心臓の音が跳ね上がった気がした。 「警察が 来たら……」  トラックが突っ込んだ家と見るからに堅気ではない男達を前に何を言えばいいのか、そんな経験することなんてない状況に一瞬言葉が詰まる。  保護したとは言え、雪虫をここに軟禁しているのは間違いない。  ましてや、普通はこんな状況になるなんて、まずないのは確かだ。  それに、探してくれと言ったところで、雪虫のことを告げていいのか…… 「  ────警察の方は大丈夫。ここには来ないよ」  とんとん と急ぐでもなく降りてきた瀬能はそう言うと、まるで当然のように傍の男に何事か指示を出しながらこちらへと歩いてくる。  瀬能が二、三と物を言うと、黒服の男達は頷いてさっと動き出した。 「先生は、怪我は?」 「してるように見える?」  このトラックが突っ込んで来た時、瀬能はこのリビングにいたはず、なのにどこも怪我をしていないなんてことはあるのか?  無理をしてるんじゃないかって疑いの目を向けると、まるで心を読み取ったかのようにこちらを向いた瀬能と目が合う。 「無理してなんかないよ」  ひらひらと蝶でも表すかのように両の掌を振ると、瀬能はオレの手の中のタブレットの画面に目を落とす。

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