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雪虫2 35

  「場所はつかたる駅の傍だね、この筋を進むと防風林の公園に出る」  指先が指示した筋を見て、あっと声が出る。  雪虫と引き離されて、買い物に行く最中に迷い込んでしまったあの細長い緑が鬱蒼とした場所だ と、一瞬で理解でした。 「でも、このタグ ここから動いてなくて……」  青いままのセキがそう言って緩く首を振るのは、何もない場所で不自然に動かなくなった と言う事実のせいだ。  追跡のできるタグなんて放り捨てられてしまえばそれでおしまいでしかない。  雪虫のタグに気づいたあの男がここにタグを捨てたのだとしたら、雪虫はとっくに移動していてここには居ないことになる。 「じゃあ、検索方法を変えて、タグをつけていない人間を探すようにして」 「っ やってみます」 「MaríaSystemを使えばいいよ」 「それ って、この街を管理してるアレですか?」 「やり方は知っているんだろ?」  オレには聞き馴染みはなかったけれど、セキはこくんと頷いてオレからタブレットをひったくって急いで画面を叩き始めた。  息を吸い込めないような、そんな時間がずいぶんと長く感じられて、実際にはほんの少しの時間だったはずなのに、苛々として何度も拳を握り直す。  水谷に鍛えられて、少しは強くなったと思ったし機敏に動けるようになったと思っていたのに。  白い顔を、もっと白くさせて怯えた顔でオレに助けを求めていた雪虫に何もしてやることができないまま、指をくわえて攫われて行くのを見送るしかできなかった体たらくは…… 「…………っ駄目です、タグをつけていない人も多いし、カメラにも雪虫らしい姿は映ってないって」  くしゃ と顔を歪ませたセキは小刻みに震えていて、今にも手の中のタブレットを落としそうだ。 「あの容姿の人間が目立たないわけない、薬で大人しくさせることはできないし。人目に触れないように袋にでも押し込んでいるのか……気を失わせているか」  瀬能の言葉に、口の中に金臭い味が広がる。  押し込める?  気絶させる?  そんな乱暴な扱いを受けているかもしれない と? 「いや、それよりも監視カメラを避けて移動しているって思った方がいいね」 「でもすべてを避けて移動するなんて無理だっ」  瀬能の言葉に反論するセキは今にも泣きだしそうな程鼻声で、一つ一つの可能性を自分自身で否定することに対して怯えているようだった。

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