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雪虫2 39

 けれど、問題は入り組んだ地下通路の中、辿ればいいと思っていた雪虫のフェロモンの匂いは吹く風に引き伸ばされ、かき消されて……  ……どこに居るかわからない。  その匂いがあればあっと言う間にたどり着けると思っていたオレは、真っ暗な中立ち往生してしまって。  雪虫を攫ったやつらがいる上に、道順もわからない真っ暗な道になんの考えもなく飛び込んだことを後悔しても後の祭りで、ただ闇雲に通路を歩くしかできなかった。 「……これ、 は」  白い土で固められた周りは、白いとは言え光源がまったくないせいか無彩色に落ち窪んだような暗さだと言うのに、足元にはぽつん と目を引く白いものが転がっている。  明らかに、他とは異質な白い小石。  摘まみ上げて掌に転がしてみると、それの白さが際立つ。 「……瑪瑙、か?」  砂浜には多くはないが探して見つかる程度には瑪瑙が落ちている。  だから昔からここに建っている城の地下に瑪瑙が落ちていても何ら不思議なことはないはずなのに、掌でころりと転がるそれが妙に気に掛かって目を凝らした。 「…………雪虫に渡したやつだ」  角の取れた三角錐を歪にしたような形と、その端にわずかに瑪瑙だと主張する白い縞を覚えていた。  指先で突いてやると掌でころころと動く。 「間違えるはずない」  拾った石の一つ一つを覚えているなんて滑稽だと言われても、それでもこれは雪虫にと渡したものだから…… 「雪虫が落としたんだ」  地面に注意を向けながらそろりと数歩行くと、その目の視界の先に白いものが見える。  駆け寄るようにして摘まみ上げるとそれはやはり白い瑪瑙だった。 「これ、も、そうだよな」  少し薄い感じの、瑪瑙と言うにはあまりもな程にしか縞の入っていないそれも、雪虫のためにと拾い集めたものだ。 「…………袋が、破けたのか?」  オレが集めた小さな貝や瑪瑙なんかを、雪虫はオレが作った袋に入れて肌身離さず持っている とセキが教えてくれたことがある。  雪虫がワザと落としてくれたのか、袋が破けたのか、それとも縫い目が甘いようだったからそこから零れたのかは定かではなかったけれど、この石が雪虫の所に連れて行ってくれるのは間違いなさそうだった。  仄かに周りが見えるとは言え、ほぼ視界はないも同然なそこを神経を尖らせながら、ほんのわずかの音も聞き逃さないように気を張って歩いていた。  なのに……  一瞬、緊張の糸が切れた。  きっかけが何かだったかははっきりしないのだけれど、ただこれ以上息を詰めて気を張り詰めていたら駄目だ と感じて、昂って浅くなっていた呼吸をほっと意識的に吐き出した、そんな瞬間だった。  空気がふいに動いたのだと気付いた時には首に腕が巻き付き、わずかの抵抗をする間もなく首を絞められて……

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