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落ち穂拾い的な 嫉妬
泣きながら駆け寄るセキが雪虫の首に巻かれた包帯を見た瞬間、ものすごい形相でオレを見上げた。
見開かれた目からは涙は引っ込んで、オレが理解できない微妙な感情が浮かんでいる。
「あ……えと……へへ」
雪虫の包帯とオレを見比べるセキにへらりと笑ってVの字を作ると、まるで雷にでも打たれたかのように飛び上がって……
さっと大神を振り返るも、予測していたのか大神はそっぽを向いている。
「っっっっ し、しずるに先越されたぁぁぁぁ」
床に崩れ落ちて嘆くセキはともかく、まずは雪虫を休ませなくちゃ。
「おっおおおお大神さんっっっ!俺もっ俺もっ!もっもっもっ 」
縋りつこうとするのを華麗に躱して、大神は何も言わずにさっさっと部屋から出て行ってしまう。
「もーぉぉぉぉぉぉっ!」
床に崩れ落ちるようにして喚くセキを跨いでオレもさっさと退散する。
「八つ当たりしてやるぅぅぅ」
八つ当たりって……ナニされるんだろ。
「祝ってやるぅぅぅぅぅ」
呪われるんじゃなきゃ、何されてもいいや。
それにしても、どれだけセキが噛んでくれと懇願したところで、大神は噛む気はなさそうに見えて……
だったらさっさとセキを遠ざければいいのにって文句は言っちゃいけない奴だ。
命は惜しいもんな。
「ん……」
腕の中の雪虫が呻くようにして首を振る。
顔にかかった髪がくすぐったかったんだろうけど、汗のために貼り付いているからかうまく取れずにぐずぐずと身じろぎした。
その度にふわふわとした香りが漂って、オレの鼻をくすぐってくる。
熱が出てきたのか、漂ってくる匂いはいつもより濃い。
誘拐されて、その上でオレまで受け入れたんだから、普通の人間でも参ってしまうこの状況は雪虫にはどれほど負担だったのか……
「ごめんな」
指先で頬に貼り付いた髪を払ってやると、ほっとした顔でこてん と頭を預けてくる。
その頼りない重さに、オレはもっと強くなって、何をしてでもこのΩを守らなければと、心に強く誓った。
END.
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