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苦い人生 2

  「オレ も、したいよ」  目指す大学も一緒なんだから……  でも、  でも、 「サボりってわけじゃねぇんだろ?」  金網に猿のように引っ付きながら悌嗣はそう言ってパクリと肉まんに食いつく。 「うん、出停になってるから、日数は大丈夫。でも……成績が、わかんないな、はは」 「うん?なんで出停?え?」  悌嗣の疑問はその年の子供らしい素直で率直で、無遠慮だ。 「なんで毎月   」 「……オレ、引っ越すことになった」  そう言った瞬間、冷たくなり始めた風がオレと悌嗣の間に吹いて、なんとも言えない沈黙が落ちた。 「は?一緒の大学に行くって言ってたのはどうなるんだよ!」 「ごめ  」  普通に手に入る抑制剤が体質的に合わないオレに医者が勧めたのは、普通の物よりも幾分高い薬で……  離婚して以来、女手一つで頑張ってくれている母さんにこれ以上負担をかけることはできなかった。だから、補助が受けられるって言うつかたる市に引っ越そうって話になっていた。  Ωであるといろいろと融通してもらえるし、理解者も多い環境なので生活しやすいから……って。 「なんでだよ!」  金網から弾かれるようにしてこちらに飛びついてきた悌嗣が肩を掴んで……  その手の熱さに泣きそうだった。  こうやってじゃれ合う時に触れる肌の熱さが嬉しくて、悌嗣の近くにいることができるってだけで幸せだったけれど、オレがΩなんかだったからそれも叶えられなくなって。  傍に居れたらそれだけで良かったのに! 「……────オレ、オメガなんだ」  さっきよりも強く吹いた風のせいで落ちた沈黙は更に寒々として暗い。 「 えっ」  疑問形とかそんなんじゃなくて、思わず漏れた小さな言葉は息を飲むような驚きが含まれていて、オレがΩだったことがそれほど衝撃だったのか食べかけの肉まんがぽとんと足元に落ちる。  やっぱりΩは、気持ち悪かったのか、  やっぱりΩは、受け入れられないのか。  引っ越したとしても友人として付き合っていけるんじゃって希望を持ったこともあったけれど、こちらを見る悌嗣の驚きを滲ませた瞳を見るとそれは望んじゃいけないことだってわかった。 「 ご、め  黙ってて。だから、もう ……ごめんっ」  謝る時はきちんと相手と向き合って とか言われて育ってきたけど、今のオレにはオレを軽蔑する悌嗣の顔を見ながら言う勇気はなくて。  叫びながら校舎へ飛び込んだ。  スリッパで学校の階段を駆け下りたせいか途中で何回か踏み外しそうになったけど、それでも足を止めずに校舎を飛び出す。

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