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苦い人生 10

「んなことが言えるってことは、もうヒートも終わりそう?」 「   ぅん、うぅんっ!まだ!  もう少し……」 「そか、わかった」  慌てて言い直したオレに苦笑を零しながら、悌嗣はオレの髭のある顎を掬い上げてちゅっと口づけた。  あやすようなそれは愛情表現と言うよりも、さっきのやり取りを誤魔化したがっているようにも思える。   「再戦の前にちょっと腹に何か入れようか?快斗も水分とらなきゃ」    俺よりもいっぱい出してるんだから ってからかうように言われて軽く睨みつけた。  ペットボトルに口をつけて、自分が思っていた以上に喉がカラカラなことに気づく。  抑制剤が効いているから発情期でも理性を手放さずに済んでいるけれど、ほんの少し前までは発情期の度に抑えきれない性欲に悩まされていた。  そんな中でする番とのセックスは最高だと言う話を、聞かないわけではないけれど、悌嗣と抱き合って今でも溶けていきそうなほど気持ちいいのにって思うと、正直、αとどうこうなりたいとは思えない。 「ほら、これ食べとけ。水分だけじゃまた潮ふ  ぶっ」  汗……だと思うもので湿気って重い枕を投げつけると、どこかの悪ガキのようにへへへと笑ってから少し小ぶりのマフィンを差し出してきた。  ふんわりとした生地から溢れたジャムは、色から考えるならブルーベリーか?  甘酸っぱい、オレの好きな味だ。   「どうせ最中はテーブルに行くのも億劫だろ?」 「うん」 「ってことで買っておいたんだ」 「わっ ありがと」  そう頷いて行儀が悪いのは承知で、ベッドで横になりながらマフィンを頬張る。    発情のピークがすぎたお陰で頭ははっきりしているが、そのせいで体がガタガタなのもわかってしまって辛い。薬で押さえているとは言え、オレの発情に付き合ってくれている悌嗣は余裕そうだった。 「お代わりいるか?他にもチーズとかあるぞ?」  こちらを振り返ってにっかりと笑う顔は高校の時と変わらないように思う。  いや、笑い方だけじゃなくて、運動しなくなってちょっとぷにぷにになってきたオレとは違って、しっかり引き締まっているし腹筋もちゃんと割れている。 「なんだよ、もう休憩終わりか?」  指についたカスタードを舐め取る仕草に色気……と言うよりはいやらしさを感じると、ヒクリと後ろが引き攣れるようだった。

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